愛と感謝の光 -3-

「大丈夫かよ音弥くん」
「だ、だいじょうぶ……大丈夫だから、絶対だいじょうぶ……」
「肩の力抜いて、一度深呼吸しろ」
 卒園式が終わり、今度は俺達がみんなへプレゼントを贈る番だ。なのに俺はいつまでも泣いていて、勇星に借りたハンカチももはや使うところがないほどびしょびしょになっていた。

 謝恩会も有難いけど、初めての合唱は園児達に捧げたい──。俺の希望で今日行なうこととなった、押川混声合唱団の初舞台。提案したは良いが、俺は自分の涙もろさを計算に入れていなかった。

「ほれ、息吸って」
 俺達が一旦引っ込んだつばめ組の教室には合唱団のメンバーが集まり、予め決めていた列を作って並んでいた。いつでも礼拝室の壇上へ出て行ける。勇星の他にも見谷牧師をはじめメンバーの皆が苦笑しながら俺を見ていた。
 鼻をすすり、大きく大きく深呼吸をする。俺の両手は勇星が握ってくれていた。

「すっきりしたか」
「……うん。も、もう大丈夫。緊張も取れた」
「よし」
 俺の頭を撫でて、勇星が「行け」と合図をする。開かれた礼拝室への入口。俺達は順番に並んだまま歩き出し、礼拝室へ戻った。

 説教壇を横に退けた舞台は広々としていて、二十六人が並んで立ってもまだ少し余裕がある。

 俺達が壇上に立った後で、海斗がピアノの前に座った。それから最後に勇星が入ってきて、会衆席の卒園生とその後ろの父兄の人達にお辞儀をする。
 婦女会リーダーの片山さんが簡単な挨拶をする予定だったのだが、緊張しているのかいつのまにかマイクは見谷牧師に回っていた。

 何も考えていなかった牧師が、慌てながらもアドリブで挨拶をする。
「押川混声合唱団、結成されて初めての合唱は卒園生の皆さんにお贈りします。曲名は『見よ、我らの全能なる主を』──原題は『Genesi』です。神の御手はこれからも皆さんの新しい世界を次々と創り出してくれることでしょう。それでは、どうぞお聴きください」
 真正面から見るスーツ姿の勇星は格好良かった。その目は力強く俺達全員の顔を見ている。

「………」
 勇星が左手を上げた。その合図で前列にいたソリストの美穂さんと俺と見谷牧師が、一歩だけ前へ進み出る。右手に温かな感触──美穂さんの手だ。俺はその手を握り返しながら左手で牧師の手を取り、俺達三人は手を繋いだ状態でそこに立った。それは三人の呼吸を合わせるため、そして調和を取るための、勇星が考えた案だった。

 手を繋ぎ、その温もりを感じることで一人ではないことを知る。たったそれだけのことが物凄く頼もしくて、安心できた。