「しあわせ」と「みらい」 -2-

「小学校に行ったら、知らない友達ばかりでドキドキするかもしれない。勉強もしなくちゃいけないから、今より遊ぶ時間が少なくなったりもするよね。小学校には、園長先生も海斗も勇星も音弥もいない。不安になったり、嫌だなって思うこともたくさんあると思う」
 道介が俯いて「ずっとここにいたいな」と呟く。俺は彼の頭に手を置き、笑った。

「でもね、それ以上に楽しいこともいっぱいあるよ。新しい友達と出会うことは、自分の中に新しい光が差し込んでくるのと同じだ。新しいことを覚えれば覚えるほど心も大きくなれるし、やりたいこと、好きなこと、自分にはこういうことが出来るんだ、ってこともたくさん見つかる。新しいことに触れて、感じて、大人になっていくんだよ。それって楽しそうじゃない?」

「……友達、できるかなぁ」
 呟いた早苗の不安もよく分かる。早苗はこの中で唯一、私立の小学校へ行くのだ。
「大丈夫。早苗は優しい子だから、絶対友達できるよ」
「でも、小学校に行くのちょっと怖い」
 道介が俺の手を握って言った。

「みんな同じ。他の幼稚園で卒園する子達も、みんな『ちょっと怖いな』って思ってるよ。道介は、幼稚園に来るのも最初は怖がってたよね。それもみんな同じだったんだよ。だけど幼稚園、楽しかっただろ? 小学校もきっと好きになれる」
「本当に? 意地悪されないかな」
「小学校は大人になるための始めの準備をする場所だから、やることが沢山ある分、どうしても嫌なことや辛いこともあると思う。意地悪な子もいるかもしれない。だけど、そういう『怖さ』に勇気を出して立ち向かった分、絶対に楽しいことも待ってるはずだ。俺は皆がすごく強くて優しい良い子達だってのを知ってる。勇気を出して頑張ってお母さんを見つけたルドルフと同じで、皆が幸せになれるって信じてるよ」

 だけど、と俺はその先を続けた。

「だけどどうしても怖かったり、悲しかったり、何かを相談したくなった時は、いつでもここにおいで。……園長先生も海斗も勇星も音弥も、それから神様も。この先何があっても絶対に皆の味方だ。絶対に守ってあげる。だからみんな、……」
 ──ああ、駄目だな。子供達の前なのに。
「……だから、……いつでも帰れる場所があるってことを、忘れないで。皆のことを愛してる人達がいることを、どうか忘れないで」
 泣き虫おとや、とカズマサが俺の頭を撫でてくれた。早苗がハンカチを差し出してくれた。皆ももらい泣きしてるし、カッコいい大人でいたかったのに、もうぐちゃぐちゃだ。

「な、何があった?」
 七人の園児と俺が抱き合ってわんわん泣いているのを見て、見谷牧師が慌てた様子で飛び出して来た。その慌てぶりが面白くて、俺達は泣きながら、……笑った。