新しい部屋と新しい理解者 -2-

 前のアパートには無かったモニター付きのインターホンで、早速来客を確認する。そこには意外な人物が映っていた。
「海斗っ?」
〈よー、引っ越し祝いに来たぞ!〉
 小さなモニターの中、短い髪をかきながら満面の笑みを浮かべる海斗。慌ててドアを開けると、「差し入れ!」とビールやスナック菓子が詰まったコンビニ袋を渡された。

「おお、結構広いし綺麗じゃん。築何年くらいだって?」
「三年だから割と綺麗だよね。海斗、わざわざありがとう。上がってってよ」
 スニーカーを脱いで框に上がった海斗が、「おっ」と目を丸くさせる。その視線の先には勇星がいた。玄関から見通せるリビングで、ソファに座った勇星は不機嫌そうに脚を組んでふんぞり返っている。

「ゆう先生! 昨日ぶり~」
「何しに来た」
「冷たいなぁ。だから、引っ越し祝いだって」
 ちなみに海斗は、俺と勇星が付き合っていることを知らない。勇星が勝手に俺の部屋に転がりこんだまま、ずるずるとその付き合いが続いているだけだと思っているのだ。それに加え普段の勇星の性格から考えて、俺を召使いのように扱っているとでも思っているのかもしれない。

「大変だなぁ、音弥くんも。ゆう先生とルームシェアなんて、俺じゃ無理だよ」
「俺もお前は無理だ。うるさそうだし」
「まあまあ。せっかく海斗も来てくれたし夕飯時だし、ピザでも頼もうか」
 好奇心剥き出しの子供の目で室内を見渡しながら、海斗がラグの上にあぐらをかいた。
「へえー、何か不思議な感じ。ここで二人で暮らすのかぁ。楽しそうだなぁ。殺風景だけど」
「海斗の部屋はごちゃごちゃしすぎなんだよ。変なガイコツの置物とか、無駄な英語の看板とか、壁にはポスターべたべた貼って」
「俺、元テクノロッカーだから」
「バンドやってたんだよな」
「うん、キーボード担当」
「それが今じゃ讃美歌の伴奏してんだから、そっちの方が不思議だよ」

 笑う俺達をソファから見下ろしながら、勇星が海斗の背中に軽い蹴りを入れた。
「二人で秘密の話してんじゃねえ」
「秘密っていうか、ただの会話なんですけど……」
「勇星、ピザ何がいい?」
「マルゲリィータッ」
 巻き舌を使っての完璧なイタリア発音で返ってきたが、その顔は不機嫌なままだ。多分、「引っ越し初日の記念に二度目のセックスをする」、なんて言っていたのを海斗に妨害されて怒っているんだろう。
「音弥くん。俺はシーフード、あと辛いやつがいいな」
「それじゃ俺はチーズ系にするよ。四種類できるやつにしよう」