秋の遠足と勇星の楽譜 -4-

 俺がメグを止めようとしたその時、
「そうとは限らねえんだよなぁ、メグちゃん」
 勇星が後ろからメグを抱き上げ、遠くに見えるウサギの広場を指して言った。

「さっきメグも抱いてたあの白いウサギは、男同士でケッコンしてるんだぞ」
「え?」
「母親が育てられなかった子ウサギを、男同士のウサギが一緒に面倒見てるんだって。どこに行くにも三匹一緒で、立派な家族なんだってさ。珍しいことだけど、飼育員のおじさんはそのウサギを誇りに思ってるそうだ」
「そうなの……?」
「人間も同じ。男同士で好きになることもあるし、女同士で結婚することもある。周りの家と違うかもしれねえけど、違うことは変なことじゃない。俺が五年間住んでたイタリアでは、男同士・女同士の結婚もできる国だったしな」
「へえー! 知らなかった」

 メグを下ろした勇星が、その小さな背中をそっと押してテルキに向かい合せる。
「テルキ君、ごめんね」
「ううん、いいよ!」
 この仲直りの瞬間が大好きだ。勇星が二人の頭を撫で、牧師もにこやかにそれを見ている。
「じゃあ、ゆう先生もおとや先生が好きってことなの?」
「ああ好きだぞ。音弥だけでなく、お前達のこともな」
「やったー!」
 上手くはぐらかしてくれたが、内心ヒヤヒヤしてしまった。
 そしてヒヤヒヤしたものの、何だか凄く嬉しかった。

 食後のお楽しみだったソフトクリームは本当に甘くて美味しくて、子供達も俺も大満足だった。スーパーで売っているバニラアイスでは絶対に再現できない味だ。新鮮なミルクというだけで、どうしてここまで美味しくなるんだろう。
「ここまで美味いと、普通に牛乳としても飲んでみてえな」
「う、うん……」
 ただ勇星がそれを舐めているのを見ると、先月の旅行での出来事を思い出して顔が赤くなってしまう。
「音弥くん、口元に白いの付いてるぞ」
「変な言い方するなよ……」

 まだ恋人同士という実感はあんまりないけれど、俺は勇星という男が好きだ。あれ以来、週に三回は互いの体に触れ合っている。それでも勇星は約束していた通り、それ以上のボーダーを超えようとはしてこなかった。

 俺としては、いつでも心の準備はできているつもりだった。だけどいざその時になるとやっぱり怖くなって、怖気づいてしまうのだ。勇星を信頼していない訳ではなく、単純に未知のものへの恐怖が働いてしまう。勇星もそれを分かってくれているからこそ、文句も言わず催促もせずゆっくり待ってくれている。

「また今夜アイスで遊ぶか」
「何言ってんだ、馬鹿っ」
 セクハラは相変わらずだけれど。