買い物デート?と二回目の夜 -6-

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「……料理って、茹でたスパゲティに缶詰のソース和えただけじゃん」
「手料理に違いねえだろ、文句言わずに食え」
 本場のイタリアンを想像していただけに少し落胆してしまったが──目の前に置かれた皿からは、食欲を刺激する茹でたてパスタとトマトの良い香りがする。

 俺はプラスチックのフォークにパスタを巻き付け、口一杯にそれを頬張った。
「熱っ──。ん、……まあ、普通に美味い」
「だろ? 向こうでもよくこいつで男を落としてたからよ」
「……そういう情報はいらない」

 言われて金曜のことを思い出し、瞬時に顔が赤くなってしまう。勇星の指先と唇を意識してしまえばもうその瞬間から全ての動作がぎこちなくなり、目の前でバスタを頬張る勇星にそれを悟られてしまうのではと思うと──気が気じゃなくて、俺は水の入ったグラスに手を伸ばした。

 腰の辺りがむずむずする。──取り敢えず、冷たいものでも飲んで落ち着こう。
 昼間はそんなこと全然意識してなかったはずなのに。思い出してしまうのはやはり、この部屋で起きた出来事だからか。

「わっ、……!」
 緊張と恥ずかしさからよほど汗をかいていたのか。手が滑り、持っていたグラスを見事に倒してしまった。しかも自分の方へ向けて。
「うわ、冷てぇっ」
「ありゃ、何やってんだよ音弥くん」
 呆れたように笑って、勇星がテーブル端にあった布巾を取る。

「い、いいっ! 自分で拭けるから──」
「……うん?」

 俺の濡れたところを拭こうとした勇星が、「その部分」に視線を落として沈黙する。部屋着として穿いていたスエットのハーフパンツは、股間の部分が傍目にも分かるほど盛り上がっていた。
 慌ててあぐらをかいていた脚を閉じる。

「……音弥くん」
「……見るな……」
「いつ、そんな要素があったよ?」
「う、うるさいっ」
 恥ずかしくて気絶しそうだ。せっかく今日一日上手いこといって、金曜の記憶も上塗りできたかと思ったのに。

「気にすんなよ、別に何とも思ってねえし」
「………」
 熱くなった顔を隠すように、俺は立てた両膝に額を押し付けた。それでも耳が赤くなっているのは勇星に見られているはずだ。
 気を遣われるよりからかわれた方が、まだましだったかもしれない。