買い物デート?と二回目の夜 -4-

 少し遅めの昼食だからか、一階「ファニーズバーガー」店内は比較的空いていた。
 厚みのあるバンズに刻んだピクルスが入ったタルタルソース、熱々フィッシュフライが挟まったハンバーガーにかぶりつきながら、俺はふと思い出して勇星に言った。

「この後、本屋寄ってもいい? 幼稚園に置く絵本とか買いたいんだ」
「別にいいけど、バイトのくせに熱心だな」
「道介が動物好きらしくてさ。何か気が紛れるような動物の本とか増やせたらと思って」
「そりゃいいと思うけど」
「そういえば勇星、道介が歌上手なのよく知ってたな。俺でさえ知らなかったよ」

 テーブルを挟んだ向かい側。勇星がコーラのストローを咥え、音を立てて啜った。
「好き勝手に歌うチビ共の中であいつだけ、背伸ばして真っ直ぐ歌ってたからな。幼稚園児であれだけ歌えれば上等だ。母親の教え方が上手かったんだろうよ」

 はあ、と思わずため息をつく。勇星が言っているのは、初日の朝の礼拝で「おそらをとんで」を歌った時のことだ。適当に弾いているだけだと思っていたのに、そんな観察をしていたのか。

「……何かさ。勇星って、見た目の印象とのギャップに差がありすぎない?」
「どういうことだ」
「だってこう言ったら悪いけど、普通にしてたら絶対ただのエロオヤジじゃん。ピアノ弾けるように見えないもん」
「エロいのは否定しねえけどさ、……言っとくけど俺まだ二十五だからな」
「ふうん。じゃあ、俺と同じ年齢の時にイタリア行ったんだ」

 結果はどうあれ、当時の勇星にやりたいことや目標があったというのは少し羨ましかった。

 俺のやりたいこと、……人生の目標、将来の夢。
 今のところ、俺には何もない。もう少し経ってまだやる気があれば、教員免許の取得に挑戦してみようかな、くらいのことしか考えていない。それも、特に他にやりたいことがないからという理由でだ。

「そういえば、勇星ってクリスチャンなのか?」
「厳密に言えばそうだな。ガキの頃に洗礼は受けてるけど、普段の俺はお前も知っての通りエロオヤジだからよ。行き先をイタリアにしたのも別に深い意味なんてなく、ただそっちの音楽が好きだから、って感じだったし」
「ふうん、修道院の美青年とは恋に落ちなかったの?」
 聞けば、勇星が笑って言った。
「奴らの攻略だけは無理だろうなぁ。そもそも俺はカトリックじゃねえしよ」
「……そこは何かはっきりしてるんだな」

 何となくでしか知らないけど、同じキリスト教でもプロテスタントとカトリックには違いがある。牧師と神父、礼拝とミサ。十字架にイエスが磔にされているのがカトリック、単に十字架だけを飾るのがプロテスタント。聖人信仰とか、はたまた聖書だけを重んじるとか、俺にしてみればあまり違いが分からないしややこしいけれど、きっと重要な違いなのだろう。

「何だろうと俺は俺だ。基本的に、信仰より自分の意思を優先させてる」
「まあ、そっちの方が勇星らしいけどさ。──なぁ、洗礼受けたってことは、勇星にもクリスチャンネームってやつがあるのか? 教えてよ、どんなの?」
「だから、カトリックじゃねえんだって」
「ないのか。残念」
 ……やっぱり、違いがよく分からない。