買い物デート?と二回目の夜

 日曜日──安息日。
 普段は園児達が使う礼拝室は、日曜日のみ一般信者のために地域の教会として開放している。ベンチに座る人達の中には毎週見る顔もあれば、今日初めて見る顔もあった。

 午前十時。俺は最前列のベンチに座って、ぼんやりと見谷牧師の説教を聞いていた。

「私を含め、人間という生き物は自分と違うものを異端として見る傾向があります。それが学校という狭い社会で集団に広がった時、繰り返し社会問題となっている子供のいじめに繋がるのです。連日ニュースで報じられている未成年者の痛ましい事件を、皆さんはどう捉えているでしょうか。特に小さなお子様がいらっしゃる方は──」

 言っている意味は分かるが、全然頭に入って来ない。……一昨日からずっと勇星のことを考えているからだ。

 金曜の夜にあんなことをしてしまった。昨日は何もなかった──というか、あまりにもぎくしゃくする俺に気を遣ってか、勇星が一日外出していた。不動産屋にでも行ったのかと思ったけれど、聞けば一日中スロットを打っていたらしい。

 そして今日。
 勇星は今、俺の隣にいる。今まで日曜礼拝のオルガン伴奏をしていたチヨさんが腰を痛めて入院することになり、勇星がその代役を頼まれたのだ。横目で見る勇星は居眠りをしているのか、腕を組んで俯いていた。

「それでは、祈りましょう」
 牧師が説教を終え、壇上で両手を組み合わせる。会衆席の人達も同じように手を組み、目を閉じる。俺も同じようにしようとして──慌てて、隣の勇星の膝を叩いた。やはり寝ていたらしく、突然のことにビクリと体を震わせる勇星。

 俺が無言で前方を指すとようやく状況を把握したのか、勇星が立ち上がってオルガン前に移動した。祈りの後で十秒程度の短い曲を弾き、それで礼拝は終わるのだ。最後を締めくくる重要な役目である。

「愛する天の我らが父よ、今週も私達をお守り頂き感謝致します。また新しい兄弟をこの教会へ遣わして下さいました。どうかこれからも彼を守り、お導き下さい」
「………」
 せっかく見谷牧師が勇星のことを祈っているのに。薄目を開けて盗み見た勇星は腰に手をあて、かったるそうに首をぐるぐると回していた。

「──この祈りを、尊きイエスの名によりお捧げ致します。アーメン」
「アーメン」
 オルガンの演奏が始まった。この間、本当なら祈りの余韻に目を閉じておくのだが……俺は監視するように、薄目で勇星の後ろ姿を見ていた。

 曲が終わり、見谷牧師が説教壇を下りる。今度は俺の出番だ。
「それではご報告に移ります」
 ベンチを立って皆の方を向き、予め用意しておいたメモを見ながら「今週の報告」をする。
「教会の婦人会に新しく北川さんが参加して下さいました。入院されたチヨさんと、産休に入られた高下さんのためにどうかお祈り下さい。それから……幼稚園の方に、新しい先生が来て下さいました。空島勇星さんです」
 名前を呼ばれた勇星が椅子から腰をあげ、頭を下げた。
「……以上です。皆様、気を付けてお帰り下さい」
 ベンチから立ち上がった人達が、俺達に挨拶をしながら教会の玄関へ向かう。

「音弥、勇星。ちょっといいかな」
 見谷牧師に呼ばれた瞬間、思わずギクリとしてしまった。金曜の「あのこと」を言われるのでは──有り得ない想像でしかないのに、全身に緊張が走る。