潤歩、彼氏モード発動 -8-

「ふあぁ……あ、……あ……」
 涎を垂らして内股を痙攣させる俺は、多分、画的にあんまり綺麗じゃないだろう。潤歩のフェラが激しくて気持ち良すぎて、頭の中がぐるぐるとろとろ状態だ。これで射精したら駄目だというから辛い。我慢なんてできるわけないのに……

「よっと」
 俺の股間から顔を上げた潤歩が、口元を拭って素早く自身の下着を脱いだ。
「あー、小せえと咥えんのラクでいいわ」
 用意されていたスキンを装着させて、アシスタントさんからローションを受け取っている。カメラマンの人と山野さんが何やら映像のチェックをしていた。今この時間、カメラは止まっているのだろうか。
 潤歩が蕩けた俺を見て、馬鹿にしたように笑う。
「へろへろパーだな」
「だ、だって……こんなの、初めてなんですもん……」
「『初めて』はこれからだろうが」

 潤歩が俺の脚を持ち上げて更に大きく開かせた。そして手のひらにローションを落とし始めたところから、再び俺達にカメラが向けられる。
「……力抜いてろよ。ゆっくり挿れるからな」
 それでもって、潤歩がまた「優しい彼氏」に戻る。俺はまだぐったりしたままだ。
「んぁっ……!」
 ぬるついた液体と共に潤歩の指が入ってきて、嫌でも意識がそこに向けられる。大雅に教えてもらった「力の抜き方」なんて、本番では全く実践できない。
「んっ、う……! んんっ……」
 中で動いているのは潤歩の中指。指くらいなら痛いとは思わないけど、未だ慣れない感覚につい力を入れてしまう。カエルみたくひっくり返った恰好の俺は、潤歩の指一本で既に瀕死状態だ。これが気持ちいいかどうかなんて少しも分からない。
「亜利馬、大丈夫か」
「……大丈夫じゃないけど、……大丈夫です……」
 天井を仰いだまま言うと、潤歩が俺の中から指を抜いた。
 大丈夫。きっと、恐らく。
 いつ終わるのか分からずにビクビクするよりは、早く先に進んでもらった方がましだ。

「挿れるぞ」
 いよいよ潤歩のそれが俺の入口にあてがわれる。あのデカい存在物が、怪物級の巨大マグナムが、つい数日前まで一生使うことなどないと思っていた、むしろそんなの考えたことすらなかった俺の、その部分に……
「………」
「っく……」
 潤歩が吐息を漏らしたのと、その腰が入ってきたのと、スキン越しに俺の中が貫かれたのと──
「いっでええぇぇッ──!」
 俺が叫んだのと、……ほぼ同時だった。

 *

「ったく、ふざけんじゃねえぞお前。しかも叫びながら俺の腹蹴ろうとしただろ。マジでこんなん初めてだわ。このまま企画が中止になったら今日一日の撮影がパアじゃねえか。分かってんのかよお前」
 パンツだけ穿いた潤歩が、ベッドの上であぐらをかいて俺に悪態をつく。
「すいません……潤歩さん」
「撮影中断なんてよくあることだよ。初めてなんだし、気にしなくて大丈夫だって」
 自分の撮影が終わってから様子を見にきてくれた獅琉が、毛布に包まり膝を抱えた俺の頭を撫でながら朗らかに笑う。
「亜利馬。頑張った、頑張った」
 あの場にいた全員に爆笑されて……山野さんすら口を押えて前かがみになって笑いを堪えていて、俺はすっかり落ち込んでしまった。初めての撮影と初めてのセックスが失敗に終わってしまい、もはや自己嫌悪以外の何物でもない。

 獅琉と一緒に来た二階堂さんだけが、無表情で何やら書類の束を見ている。
 そして──
「亜利馬は拘束だな。口枷も用意しておくか」
 そのゾッとする独り言が、俺の耳にはっきりと届いた。