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「あっ、あっ……翔宇っ! お、俺っ……」

 荒々しく扱かれている部分に限界が近付いていた。

「俺もイきそ……」

 翔宇は俺のそれを握った手と腰を、何度も、激しく前後に動かし続ける。

「うぁっ! あっ、あ……イ、くっ……」

「響希っ……!」

「ああぁっ……!」

 俺が絶頂に達した後、翔宇が体を倒して強く抱きしめてくれた。

「っ……!」

 そしてそのまま、翔宇が俺の中で果てる。

「……はぁ」

 二人分の激しい息遣いと心音が、静まり返った室内を支配している。

 翔宇がゆっくりと俺の中からそれを抜くと、粘ついた体液が俺の入口から垂れてシーツに滲み込んで行った。

「……だ、大丈夫か、響希」

 ぐったりとベッドに横たわった俺の隣に、翔宇がうつ伏せる。終わった瞬間の俺はまさに放心状態といった感じで、翔宇の問いかけに答えることすらできなかった。

「はぁ、気持ち良かった……」

 ティッシュを箱ごと手に取った翔宇が、俺の腹に付いた精液を拭いてくれた。その後に自分のそれを拭き、最後に俺と翔宇が繋がっていた部分を丁寧に拭う。

「……翔宇」

「なに?」

「いつも、仕事の時こんな感じなのか……?」

「ん……?」

 自分でも可愛くないことを言っていると思った。

 だけど一度翔宇に抱かれて芽生えてしまったこの気持ちは、もうどうしようもない。俺はたぶん、これ以上翔宇に他の奴を抱いてもらいたくないと思ってしまっている。

「響希、腕枕してやる」

 俺は広げられた翔宇の上腕へ頭を乗せ、逞しい胸元に手を置いた。

「仕事中の俺は『詩音』だから、何もかも演技でやってるだけだ。でも今は、マジで気持ち籠ってたんだぞ」

「分かってる。けど……」

 汗をかいた翔宇の肌。指先で触れながら、俺は唇を尖らせる。

「俺もお前のこと言えた義理じゃないけど……。なんか、ちょっと……」

「嫉妬しちゃうか?」

「……今まで何とも思ってこなかったのにな。おかしな話だ」

 翔宇が笑いながら大きく息をついた。

「確かに俺も、これから響希が客に抱かれるかもって考えると、嫌だな」

「うん……。なんか、自分でも不思議なくらいに次々と欲が出ちまうんだ。初めは翔宇が誰と付き合ってもいいやって思ってたのに」

 それが今では、例え仕事だと分かっていても翔宇が他の男を抱くと思うと胸が苦しくなってくる。これって、一種の束縛なんだろうか。俺が欲張りなんだろうか。

「ごめん、翔宇……。仕事のことは口出ししない決まりだったのに」

「いや、謝るなよ。だってそれって当たり前のことだろ。普通なら付き合ってる奴を他の人間とヤらせるなんて許せねえモンだって。もしかして俺ら、二十一歳にしてやっと普通の男の考え方が持てたんじゃねえのかな」

 窓の外は明るくなってきていた。午前五時少し前の、紫色の空。

「普通かぁ……。今までもある程度は普通なつもりだったけど、セックスに関しては明らかに普通じゃなかったもんな。翔宇は特に」

「う、うるせえな。これからちゃんとすればいいんだろっ」

 翔宇に鼻を摘まれ、俺は身をよじって笑う。

「………」

「だからさ、響希……」

 ふいに、真剣な声で名前を呼ばれた。

「……ん?」

 俺の肩を抱きながら、翔宇は天井を見つめている。

 そして──

「仕事、一緒に探そうか」

「………」

 その言葉はきっと、俺にとって最後の魔法。潤んだ目から溢れ出したのも、きっと最後の涙。

 頷いた俺の頭を撫でる翔宇の手と、静かに重なった唇。

 この温かさだけは、これからも永遠に続くんだ。

「ずっと傍にいるよ」

 夜が終わろうとしている──。