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 ふと、翔宇が言った。

「ちょっと無理矢理カップリングさせてる感じするよな。このままだと零が言ってた通り、二人でAV出させられるレベルだぞ。そうなったらどうするよ、響希」

「………」

 翔宇となら別にいいよ。

 ふざけて言おうとして、だけど言えなかった。

「……あっ、見てみろ響希。零の店も載ってるじゃん。これ零だろ」

 翔宇が適当に捲ったページを指さして言った。

「どれ」

 見ると確かに、新人のボーイ達が数枚掲載されている横に、『人気ナンバーワン』のコメント付きで零も小さく紹介されている。

「へぇ、さすがに零のところは若い奴が多いな。本当か知らんけど十代ばっかりだ」

 思わず感心してしまった。

「なんか翔宇が言ってたアイドルグループみたいじゃん。零がリーダー」

 どのボーイも一様に愛嬌のある顔立ちをしている。だけど、その中でもやはり零の人間離れした美しさは群を抜いていた。

「確かに。こいつら片っ端から全員揉み倒してやろうかな」

「それ相当金かかるぞ」

「じゃあ響希とする」

「一人で抜いてろ」

 それから雑誌を閉じ、俺達はまた他愛のない会話で盛り上がった。

「目標額貯まったら、もっといい所に引っ越そう」とか、「どっちが早く客つくか賭けよう」とか話していると、そのうちに翔宇が、

「七夕の花火大会のことだけど」

 そう切り出してきた。俺だけ行けないことを考えるとどうしても切なくなってしまうが、空気を壊すのも嫌だったからわざと身を乗り出して相槌を打つ。

「零誘ったら、仕事なければ行くって言ってた」

「マジで。良かったじゃん」

「響希とはまた別の日に予定組まないとなー。調べたら八月の頭くらいにもでかいのがあるらしいから、早いうちに休み希望出しておこうぜ」

「そうだな。まぁ、七日は仮の誕生日を盛大に祝ってもらうさ。俺が高級ワイン飲みながら風呂に入ってのんびりしてる間に、翔宇は暑い中熱いモン食って汗だくになるがいい」

 俺が言うと、翔宇が煙草の灰を灰皿に落としながら笑った。

「ていうか汗だくついでに、今度こそ零とヤる」

「青姦だけはやめとけよ。警察もいるだろうし」

「俺がそんなことすると思うかっ」

 笑っていれば気分も紛れる。嫌なことが頭を過っても、顔に出さずにいられる。今の俺はこの場を笑顔でやり過ごすしかないのだ。そんな自分が惨めで、情けない。

 その時、ノックの音がして待機室のドアが開いた。

「流星くん、詩音くんいる?」

「あ、はい」

 顔を覗かせたのは奥田さんだった。手にしたメモを見ながら、明るい声で俺と翔宇に告げる。

「ええと、流星くんは出張で六十分の予約が一本。詩音くんは新規のお客さん来てるから、ついてあげれるかな」

「二人同時か。引き分けだな」

 俺が呟くと、煙草を処理しながらベッドを降りた翔宇が奥田さんに質問した。

「奥田っち。俺は何百分コースたもうた?」

「詩音くんは個室で百二十分たもうたよ」

「二倍で俺の勝ち! 流星、終わったらここに戻って来いよ。次も俺が勝つから」

 そう残して部屋を出て行く翔宇の背中を見つめていると、奥田さんが口元に手をあてて俺に囁いた。

「流星くん、今日は結城さんからの予約だよ。誕生日の日のこと、よろしくね」

「分かりました。じゃあ、準備します」

「車で待ってるよ」

 結城佳宏。俺の上客だが、七日を目前にして予約を入れてくるなんて何かあったのだろうか。しかも普段なら半日、最低でも百二十分コースで入れてくるのに、今日は六十分とずいぶん短い。

「あ、そうか」

 よく考えてみたら今日は平日だ。たまたま時間が空いたのか、それとも必死に時間を作ったのか。どちらでも構わないが、会社を経営している忙しい身で俺に会いに来てくれるなんて、可愛い人だと思った。

「まぁ、あの人なら延長もあり得るか」