#27

 多分俺は、今日という日を忘れない。四年目にして初めて、大和と強い絆で結ばれた──今夜の出来事、その全てを。

「はぁっ、……は、ぁ……」

「……はぁ。お、お疲れ……政迩」

 俺の体から身を起こした大和が、だるそうに手を伸ばして枕元のティッシュケースを掴む。俺はその下で仰向けに寝たまま息を弾ませ、そんな大和の動きをじっと見つめていた。

「平気か? どっか体痛てえとか、ない?」

「……平気」

 自身のそれと俺の後ろを丁寧に拭いた後で、大和が俺の隣に寝転がった。

「はあ……。すげえ良かった」

「……ん」

「政迩、触らないでイッたのって初めてだろ。それほど俺のが良かったってことだよな。それって、男としてすげえ嬉しい」

「……うん」

 もう少し余韻に浸っていたいのに、大和のお喋りは止まらない。

「四年も付き合ってきたけど、今日初めて政迩と……何て言うか、文字通り『繋がれた』って感じがした。自分でも恥ずかしいこと言ってるとは思うんだけどさ」

「………」

「……チカ、眠い?」

「ううん。……俺も丁度、同じこと思ってたから」

「そうかぁ……」

 大和が笑って、俺の頭を撫でてくれた。

「これからはさ、お互い何でも言い合っていこうな。例えちょっとしたことでも、二度とチカを嫌な気持ちにさせたくねえから。俺鈍いから、そういう時はどんどん指摘してくれ」

 俺は少しだけ唇を尖らせ、大和に言った。

「……じゃあこれからは、客とか他店の女とかに絡んでいくなよ」

「えっ、なに? もしかして実は嫉妬してた?」

 大和の顔が嬉しそうに崩れてゆくのを見て、「やっぱり言わなければ良かった」と俺は少し後悔した。

「なんだよ、そんなの言ってくれればすぐに改めたのにさ。ほんと、チカちゃんは素直じゃねえな」

「うるさい。じゃあ明日から改めろよ。大和はもう客に絡むの禁止な。来月のホワイトデーも一切返さなくていい。隣の店の差し入れも断れ。話しかけられたら無視しろ」

「む、無茶言うな。そんなの俺、ただの嫌な奴じゃん」

「……っていうくらい、俺は嫉妬してんだよ」

 恥ずかしかったが、長年思っていたことを言えてすっきりした。

 大和が嬉しそうに笑って、俺の頬を軽くつねる。

「……俺さ。政迩と出会えて、本当に幸せ」

 俺の大好きな笑顔。俺が守らなきゃならない笑顔。

 嬉しくて、胸が一杯になる──。

「俺も幸せ。あの日の放課後、傘忘れて、……本当に良かった」

「政迩」

「……ん?」

「顔真っ赤だぞ」

「っ……。う、うるせえ……」

 思わず大和に背を向けて、抱えた枕に顔を埋めた。本当に大和という男は、いいところで雰囲気をぶち壊す。……それはお互い様か。

「悪い悪い。政迩がそういうこと言うのって、珍しいからさ」

 後ろから大和に抱きしめられ、俺はむくれながら言った。

「俺だって言う時は言う」

「うん、うん。そうだよな。これからはもっと言ってくれて構わねえんだぜ」

「嫌だね」

「もちろん、意地っ張りなチカちゃんも可愛いけど」

「うるせえってば……」

「こっち向けって。キスしてやる」

「………」

 大和がキスしてくれるなら。

「お、向いた」

 大和が、喜んでくれるなら。

「愛してるよ、政迩」

「俺も……」

 ──これからは俺も、少しは素直な男になってみようか。