第7話 始動 -6-

「そのオーナーとは連絡つかないんですか?」
 もしも直接話を聞くことができれば、当時のオークションの進行の様子などを知ることができる。とにかく俺達が今一番欲しいのは情報だ。例え些細なことだとしても、知っておいて損は無い。
「分かんねえけど、オヤジに聞いてみるよ」
「だけど國安、俺達がこの件について嗅ぎ回ってることは組長に知られるなよ。柳田と繋がってるんだろ、くれぐれも慎重にな。少しでも変だと感じたらすぐに手を引け」
「その辺は安心してくれ、今の俺に出来ないことはねえ」
 頼もしい顔で頷いた國安が立ち上がり、事務所の出口へ向かいながら言った。
「リオちゃんを助けたら、この先もぜってえ俺が守る」


 そうして閉められたドアに視線を向けたまま、理人が呟いた。
「確かにな。売られる奴らを助けたとして、その後のことも考えておかねえと」
「万が一理人が追われる身になったら、俺が守りますよ」
「馬鹿言え、そういうのは俺が言う台詞だ」
 理人は笑ったが、その顔はどこか張り詰めていた。恐らく何かとんでもないことを考えている最中なのだろう。

 オークションに出品される青年達を助けるなんて、普通に考えたらイベントをぶち壊すこと、つまりグループへの裏切り行為だ。一体どんな報復を受けるのか、逃げたとしてもどこまで追いかけられるのか……俺は柳田のことはよく知らないけど、理人はそれを知っている。
 知っているからこそ詳しいことを簡単に話さないし、知っているからこそ自分一人ではどうにもならないと認めている。初めて会った國安に協力を頼んだのは意外だったけど、現時点で味方は一人でも多い方がいい。

 理人の強みは柳田悠吾と違って、心から信頼し合っている人間が多いということだ。どうにかそれを追い風にできないかと、俺は目を閉じて桜に祈る。

 國安には言わなかったが、落札された青年にとってそれは「一晩の仕事」ではない。『追加料金で日にちの延長も承ります』──理人が受け取った落札者側の契約書には、一見すると見落としてしまいそうなほど分かりにくい箇所にそんな一文が隠されていた。
 悠吾の話では今回、単純な金目的で商品となることに立候補した若者もいると言う。

 彼らには知らされていないのだ。例え金を貰えても、二度と家族の元へ帰れないかもしれないことなど。