第6話 選ばれた堕天使 -7-

 イーゲルが口元に指をあてて小首を傾げた。
「Cは、女の子。女装した男の子。可愛くてエロくて、女の子よりも女の子らしい、特別な子」
「い、嫌だそんなの。何で俺が!」
「悠吾様が決めたんだから仕方ないよ。業界には変態も多いけど、まだ男に抵抗があるお客様もいるでしょ。そういう人にも気軽に競りを楽しんで頂くために、君のような特別な商品が用意されるんだ。責任重大だよ」
「俺にカツラかぶせて女装させるってこと? 別に、男が無理なら本物の女を用意すればいいじゃんか」
 自分が最低なことを言っているのは分かっていたが、それでも、どうしても女装だけは嫌だった。そういう趣味がない男にとって、女の代わりにされるというのはこれ以上ない最大の屈辱なのだ。


 ダメダメ、とイーゲルが両手を振る。
「普通の女の子じゃ満足できない方達なんだから、そんなのつまらないでしょ? 分かるかなぁ、この感じ。見た目は完全な女子なのに、アレが付いてる背徳感」
「………」
「きみ、悠吾様に抱かれてきたんでしょ? その上で悠吾様がC判定下したってことは、その素質があるんだよ」
「………」
「あぁっ、泣かないで、ほら。別にきみは騙された訳じゃないよ。悠吾様は本当に君を気に入ってる。だからこそ、こんな栄誉を与えてくれたんじゃないか」
「か、帰りたい」
「ダメ」
「じゃあ、悠吾と話を……」
「ダメ、ダーメ」


 俺はごねる子供のように首を振り、その場で地団駄する勢いで叫んだ。
「嫌だ! 絶対にそんなのやらねえからな! 誰がそんな変態クソ野郎共相手に──」
 ヒュッ、と音がしたのに気付いた時には、既に頬を張られていた。
「………」
「ごめんよ、悠吾様から初日の二、三回なら顔を叩いていいって聞いてたから、つい」
 立ち上がったイーゲルの手には乗馬鞭が握られていた。張られた頬がじんじんと痛み、両目と喉の奥が焼けるような熱さに襲われる。

「う、……」
 俺はそれこそ子供のように泣いた。鼻水を垂らしてしゃくりあげ、息もできないくらいに、声をあげて泣いてしまった。
 騙されたんだ、俺は。優しくされて本気になって、うかれて、全部嘘だったのに──馬鹿みたいだ!

「俺は今回きみ専用のスタイリストだけど、いつもは相棒のヴェルターと交代で調教係もやってるんだ。いい子にしてたら優しくしてあげる。リオ君、今は泣いてもいいけど落ち着いたら一度お着替えしようね」
「う、ぅ……」
「今のうちに言っておくけど、汚い言葉はダメだよ。今度お客様をクソ野郎なんて呼んだら、ヴェルターと一緒にきみを地獄に落とすからね。辛いよ、きっと」
 大丈夫、頑張って、とイーゲルが俺の背中を撫でる。
 涙は止まったけれど、……身体中の震えが止まらなかった。