第2話 リオ -6-

 声のトーン、汗のかき方、目の開き方。リオは嘘をついていないと俺は直感的に判断した。そうなると、リオが健太郎を強請っていたというセンは消えたことになる。健太郎は本心からあんな馬鹿げた考えを口にしていたのか。


「坊ちゃんとは普段、どういう会話をしてるんだ?」
「うーん……あまり他のお客さんと変わりませんよ。趣味とか好きな映画とか、あとはまぁ、多少はエロい話とか……。健太郎さんはあんまり会社や家族のことは話さないですね。もちろん婚約者の人がいるとは言っていたけれど、いつ結婚とかどういう所が好きとか、そういう話は聞いたことないです」
 それに、と付け加えてリオが続けた。
「お客さんてあんまり自分の本当のことは話さないもんです。大抵嘘をつくか、話を盛るっていうか。そうなると話の真偽なんて僕らには分からないですよ」
「そうかな」
「え?」
 リオの目が俺に向けられる。


「……なるほど、店の人も言っていたように君は気配りも出来て仕事の方も巧いのかもしれない。だけどそれだけでリピート率ナンバーワンって、普通に考えたら結構大変なことっていうか……気配りとサービスだけじゃ成し得ないと思うんだよな。だってそれくらいなら、覚悟を決めて努力すれば誰にだってできることだし」
「何言ってんだよ煌夜、それプラスこのルックスだからナンバーワンなんじゃねえか。俺だって一度試したらたぶん通っちゃうぜ」
「それは理人が『商売男プロ慣れ』してないからでしょ。売り専通いするような目の肥えた人達に何度もリピートさせるってことは、これはもう生まれ持ったリオの才能なんです。何を言えば男が喜ぶか、どういう態度をとれば自分を好きになるか。その上で男達が一線を越えて『自分側』に踏み込んでこないようにすることもできる。彼は水商売や風俗をやる為に産まれてきたような、究極のイロコイ駆け引き上手なんですよ」
「………」
 黙り込んだリオがじっと俺を見つめ、やがて観念したかのように大きな溜息をついた。


「はあ、……分かったよ。確かに俺は客が喜ぶツボも熟知してるし、本気で付き合いたいとか迫って来る男を馬鹿のふりして軽くスルーしたりもし慣れてる。だけどそれってこの仕事してる人ならある程度は誰でもしてることだよ? 男でも女でもさ」
「リオは子供の頃から周りに持て囃されて育ってきたんだろう。それこそ男女関係なく。男を手玉に取る才能が開花したのは小学生の時か。中学では既に何人もの同級生、上級生や教師とも関係を持っていたみたいだな」
「ふうん。面白いね、煌夜さん。どうして俺のこと分かるの? もしかして調べた?」
「ただの勘だ。この程度のことなら、調べるまでもない」
「この程度、ね……」