バトル オブ ライブ 王者奪還戦 -6-

 ゆっくりと貫かれながら雀夜にしがみつく俺に、雀夜が言った。
「お前は心配し過ぎだ、色々とな」
「う、……だ、だって……あっ……」
「俺の評価だとか、売上だとか、自分が淫乱だとか、そんなモン気にしなくていい。お前が素直にやりたいことだけをやれ」
「あ……」
 俺のやりたいこと。……そんなの、決まってる。


「……でも雀夜、俺が突っ走ったら怒るでしょ」
「お前はまだ子供だから空気も読めねえが、今より成長すれば自然と物事の判断ができるようになるだろ。俺の傍にいてそれが出来ねえとは言わせねえぞ」
「う、うん……雀夜に怒られそうなことは、しないようにする……けど、あっ……」
「限度を超えそうになったら止めてやる。お前の口の塞ぎ方は分かってるからな」
「ど、どういう意味──あっ、あぁっ! やっ、雀夜っ……! やあっ……」
 雀夜の腰が打ち付けられ、その後はもう言葉にならなかった。激しく俺の中を前後する熱に思考が奪われ、萎えていたはずのそれが再び芯を持ち始める。


「は、あぁっ……、気持ちぃ、雀夜っ……」
「そうやって、素直に感じてろよ」
「う、あ……雀夜っ、雀夜ぁ、……! もっと、欲し……もっと……あぁっ」
 しがみついていた俺の腕を引き剥がし、雀夜が強く指を絡ませてきた。そのまま体を倒し自重で俺をベッドに押し付け、深く口付けられる。
 何度も激しく貫かれながら密着し、キスをして、舌を絡ませ合って──何だか、二人が一つの塊になって溶けて行くみたいだ。
 そんな甘い夢を見ているような感覚こそが、愛あるセックスの醍醐味なのかもしれない。

「……クソ、予定外に本気出した」
「ごめんね雀夜、大丈夫?」
「ガキに心配されるほどヤワじゃねえ」
 結局あの後「素直に」何回戦もねだった俺のせいで、雀夜の体力ゲージが一気に減ってしまった。それでも応えてくれるのは嬉しかったし、こうしてくっついて寝転がっているだけで幸せだ。……まあ雀夜のことだから、優しいのも今日だけなのかもしれないけれど。


「あ、凄いよほら。『今日のライブは雀夜と桃陽の付き合った記念日動画』だって、コメントされてる」
「だから、そういうものを見るなって言っただろうが」
「嬉しいコメントは見てもいいじゃん。『アーカイブ永久保存』だって」
「絶対残さねえ」
「自分でやった企画なのに? 俺も後でまた見返そうっと」
「お前のバカ面が何万回も再生されるのはいいかもな」


 そんな意地悪も雀夜らしくて好きだけれど、これからのことを思うと今まで通りにはいかない。
 俺と雀夜が「公式のカップル」になったってことは、今後の動画にも影響が出てくるということだ。本当のパートナーなのに下手な動画なんて見せられないし、これまで以上に気合を入れないと。


「無理矢理系の動画とか、ちょっと演技の方も頑張らないとね。雀夜はそのままでもいいけど、俺は嫌がる演技って苦手だからなぁ。どうせ付き合ってるんだしって思われちゃうと、設定にリアリティがなくなるよね」
「どうにでもなるだろ、そんなモン。下手な演技したら本気で犯し殺す勢いでヤるぞ」
「……冗談じゃないから怖いんだよなぁ……」
 溜息と同時にスマホを閉じて、俺は雀夜の胸板に頭を乗せた。
「まあでも、俺の場合は雀夜に尻叩かれるのが一番気合入るから。丁度いいかもね」
「今回のライブはお前にケツ叩かれた結果だったけどな」
「え?」
「……あいつらの再生数は軽く超えただろうよ」
 そう言って、雀夜が目を閉じ寝息を立て始めた。
 雀夜が本気になったのは、俺が康政に変なちょっかいを出されたからかと思ったけれど。
 ……もしかして、雀夜にずっと王者でいて欲しいという俺の思いが伝わったんだろうか?

 *

「おはよう、桃陽。昨日のライブ、社内でも好評だったぞ」
「松岡さん! もう本当にびっくりしたんですから、今度からはちゃんと俺にも教えといてくださいよ!」
「済まなかった。でもその反応が逆に良かった」
 松岡さんが上機嫌なのはきっと、俺と雀夜の望む結果が得られたということだ。俺はいつもより優しい笑みを浮かべている彼にしたり顔で訊いてみた。
「良かった、っていうことは?」
「ああ、南雲と康政を始め他のモデルの再生数をダントツで抜いた」
「やったぁ! イエス! よっしゃ!」
「お前たち全員のお陰でサイト全体の売上も右肩上がりだ。よくやってくれたな」
「へへ……」
「桃陽~」
 満面の笑みで頭をかいた俺の背後から、出勤したばかりの南雲がニュッと顔を出して言った。
「今回は抜かれたけど、次は俺達もいい企画考えて頑張るよ」
「俺達だって頑張るし。何たって公式パートナーだもんな」
「あれ、凄いグッときた。思わず俺も康政もパソコンの前で叫んじゃったもん」
 はしゃぐ南雲に鼻高々でふんぞり返る俺。呆れ顔で腰に手をあてる松岡さん。
 いつもの事務所の風景。スタッフ達もいつもの顔ぶれ。同じ仕事に同じ友人。


 そして──


「ガキみてえに騒いでんなよ」
「雀夜! 昨日の俺達のライブすっごい良かったって、松岡さんも南雲も言ってくれて──痛いっ! 痛い痛い痛い、何すんだよっ!」
「朝からキンキンうるせえ」
 そして、相変わらずの俺と雀夜。


「アイアンクローは嫌だっていつも言ってるのに……。もう公式パートナーなのに……」
「関係ねえ。お前の口の塞ぎ方は分かってる、って言っただろ」
「あれって、こういう意味っ?」
 だけどその「相変わらず」って、結構良いモノだ。それはだって、平穏な日常が続いているって意味でもあるのだから。


 そんな相変わらずの俺達に、松岡さんが手を叩いて言った。
「南雲は次の動画の打ち合わせ。雀夜と桃陽は午前中の写真撮り。てきぱき動けよ、『公式パートナー』」
「はいっ!」
「……はぁ。しばらくはネタにされそうだな」
 うんざりした顔で雀夜が溜息をつく。俺はそんな彼の手を取り、愛しくて堪らない「日常」の中へと今日も元気に飛び込んで行った。

 

 東京ナイトピーチ!・終