亜利馬、AVモデルになる -8-

 少し考えてから、俺は獅琉に聞いた。
「獅琉さんは、どうしてこの仕事を……?」
「俺もスカウトだったんだ。潤歩もね。俺達学生時代から仲良くて、一緒に歩いてたら一緒にスカウトされた。潤歩はあんな調子だから即受けしてたけど、俺はだいぶ悩んだよ」
 照れ臭そうに笑って、獅琉が続ける。
「人前で裸になるのはやっぱ抵抗あったし、家族とか知り合いにバレるのも怖かったし。……でもさぁ、同じくらいわくわくもしたんだ。知らない世界を知りたくて、自分を試してもみたかった」
「………」

「セックスを見せる仕事って、凄いことだよね。昔は借金とかが理由で出演するパターンが多かったんだろうけど、今は楽しんでやる子もたくさんいる。一つの作品作るのに時間かけて打ち合わせして撮影して宣伝して、……完成した時はちょっと感動するよ」
 獅琉の目は輝いていた。それは自分の仕事に少しも不安や後ろめたさを感じていない、誇りに満ちた輝きだった。
「家族にはバレてないんですか?」
「バレたよ。匿名で密告されるっていう、最悪の形でね。かなりの修羅場になったけど、ちゃんと説明したら一応は納得してくれた。小さい弟がいるんだけど、弟はその道に巻き込むなよって今でも言われるくらい。だから一応、親公認」
「………」
「親にバレたくないなら止めときなよ。女の子のAVよりはバレる確率低いけど、それでも何があるか分かんないからね」

 俺は父ちゃんと母ちゃんの顔を思い浮かべ、考えた。
 二人とも放任主義とまではいかないが、開けっぴろげで楽天的な性格だ。高校進学も上京の時も特に反対されず、思えば子供の頃からあれやこれやと口を出されることもなかった。
 きちんと説明すれば案外、俺の話を聞いてくれるかもしれない。

「……っていうか、一番の問題はそこじゃないんですってば! 男同士のAVってとこ、そもそもそこが一番引っかかってるとこなんです!」
 獅琉がくすくすと笑って「そうだったね」と頷いた。
「でも、興味があるならやってみてもいいんじゃない? やる気がないなら、俺にこの仕事始めた理由なんて聞かないでしょ」
「……た、確かに興味ゼロってわけじゃないですけど……」
「十八歳で初心者って、それだけで無敵だよ。亜利馬、凄い人気出ると思う」
「そんなモンなんですか……?」
「ハワイも行けるかもしれないし、企画が通れば歌って踊れるかもしれないし、演技力だって鍛えられるだろうし。もちろん大変なこともあるけど──」
「………」
「楽しいよ、きっと!」
 そのきらきらな笑顔が眩しくて、俺は両手で顔を覆った。

 そして──

「……く、……い……ます」
「うん?」
「……よろしく、お願いしますっ……!」
 声に出して決意した。

 もう、戻れない。──やるしかない。