バトル オブ ライブ 王者奪還戦 -3-

『ガチデート?』『うわ、リアル! めっちゃいいじゃん』『桃陽、嬉しそー』
 物凄いスピードで流れて行くコメント達。恥ずかしさと混乱で目が回りそうだ。雀夜はしれっとした顔で笑っているし、インカムを付けているのに松岡さんからの指示はない……ということは、松岡さんもこの展開を理解し認めているということだ。そりゃそうだ。わざわざカメラマンを遣わせてるんだし。


「う、うわぁ……ちょっと本当に予想外のドッキリなんですけど……いいの、これ? ていうか、恥ずかし……」
 真っ赤になった顔を両手でごしごししながら、俺は隣の雀夜に顔を向けた。この恥ずかしさを打ち消すには、笑いに持っていくしかない。
「ていうことはさぁ、雀夜。あの日妙に優しかったのって、撮られてる意識があったからだろ。珍しいこともあるもんだ、ってずっと思ってたんだよ。結局演技だったんじゃんよ~」
 真相が分かって少しがっかりだけど、別にいい。がっかり感を相殺できるくらい、嬉しかったのも事実だから。
「まあ、多少演じた部分もあるが……九割は素で行動してたんだがな」
 雀夜が椅子の背もたれに体重をかけ、腕組みをして脚を組んだ。
「絶対嘘だ、九割なんて」
「恋人に優しくするのは当然のことだろう」
「……へ?」


 ……恋人。何それ。言っていいのかそんなこと、ライブで……


「さ、雀夜あぁッ? 何言ってんの、お前っ……!」
「事実だろ。俺はそういう認識だったが、お前は違うのか」
「ち、違くな……い、けど……! え、ちょっとこれ何なの本当に?」
 怖い。怖くてコメント欄が見られない。どうにかこれも視聴者ドッキリの方向にシフトチェンジできないものだろうか。……いやもう遅い。俺がこんなに慌ててたら、もうきっとバレている。


 雀夜がパソコンを覗き込み、「ふ」と笑ってカメラに視線を向けた。
「ああその通りだ。俺達はそういう関係だ」
「さ、っ……!」
「文句があるのは構わないが、こればかりは変えようがない。俺はコイツを守って行くと決めた。仕事だけでなく、プライベートでもな」
 恥ずかしさと混乱と、心の底から込み上がってくる嬉しさとで――感情の収拾がつかない。どんな顔をすれば良いかも分からない。見開いた目に涙が溜まっていたと気付いたのは、雀夜の顔が滲んだからだ。止めようと思っても後から後から涙がこぼれて、もうどうしようもない――。


「そういう訳で、この続きがコッチだ」
 雀夜が自分のスマホを操作し、カメラに向けた。
「映ってるか? モザイクかけてねえけど、こんだけボケてたら必要ねえだろ」
「え、雀夜。それってもしかして、車の中で撮ってた……」
 雀夜が動画の音量を上げてゆく。
〈ああぁ、ん……! 雀夜、もっと……もっと激しく突いてっ……!〉
「っ……!」
〈雀夜、大好き。……大好きっ……!〉
「ちょ、やめろぉッ! やめろ雀夜っ、それは駄目ぇっ!」
〈ああっ、もうイッちゃ――イッちゃうぅっ……!〉
「や、やめてえぇ――ッ!」
 慌てて雀夜のスマホを奪おうと両手を伸ばしたが、あっさりかわされてテーブルに突っ伏してしまう。しかもスマホを放り出した雀夜がそのまま俺の体を引っくり返してテーブルに固定し、上から唇を塞いできた。
「んぐっ……!」
 カメラの前で公開キス状態だ。嬉しいのに焦りの方が強くて、もう何が何だか分からない。
 とにかく俺の頭にあったのは、「雀夜ファンからボコボコに叩かれる」――それだけだ。


「桃陽」
 唇が離れてから、雀夜が俺の名前を読んだ。いつもの意地悪な目付きなのに口元は弛んでいて、こんな時だけど物凄くセクシーだ。とても目を合わせてなんていられない。
「……な、なに……。何だよもう……」
 その弛んだ唇が薄く開き、カメラの向こうの視聴者にもはっきりと聞こえるように言った。
「これからは『公式』パートナーだ。覚悟しとけよ」