マイ・スィート・ショコラ -4-

 これがサイトの動画になるのかどうかは分からない。いや、むしろそんなのどうでも良い。俺達のプライベートセックスを撮影するなら、俺達の好きなようにやっていいってことだ。
「雀夜、……」
 だから俺は懇願した。恥ずかしさに頬を真っ赤にさせて、潤んだ目で雀夜を見上げながら、……
「命令して、雀夜……。恥ずかしいこと、いっぱい言って欲し、……」
 ずりずりと脚を持ち上げて股を開き、雀夜の嗜虐心を煽る。雀夜は普段からドSだけど、どちらかと言えば痛みより羞恥を与えたいタイプなのだ。
 とは言っても俺はマゾじゃない。なのに雀夜が相手だと、どうしようもなく「そういう気分」になってしまう──


「色気のねえ下着だな」
「ご、ごめ……。こうなるって知ってれば、少しは……」
「横からずらして、チンポ出して見せろ」
「は、はいっ……」
 言われた通りボクサーパンツを足の付け根部分からずらし、勃起したそれを露出させる。ビクビクと脈打つ俺のそれは雀夜の「命令」に喜び泣いているようだった。
「……あれから風呂入ってねえだろ。昼間のザーメンと小便の匂いがすんぞ」
「やっ、やだ……ぁ、言うなよぉ、そんなっ……」
 俺の両膝を押さえて開かせたまま、雀夜が舌なめずりをして更に言った。


「久々に小便垂れてるとこ見てえな」
「だっ、だめ! それはだめ、マジで絶対だめ……!」
 流石に皆が見てる前ではそこまで出来ない。仕事としての「そういうプレイ」の撮影なら心の準備もできるし頑張れるけど、突然そんなことを言われても、単純に恥ずかしすぎる。
「命令されてえんじゃなかったのか?」
「げ、限度ってモンが……。それに、久々って……昨日も見たじゃん」
 雀夜は小スカプレイが好きだからよく俺にそれを強要する。俺も嫌いじゃないけど、やっぱり人間の本能として恥ずかしさの方がずっと大きい。


 雀夜が意地悪く笑って俺のそれを握り、言った。
「じゃあお前が言えよ、して欲しいこと俺に命令しろ」
「さ、雀夜に命令なんて……」
「一応、誕生日なんだろ。何でも従ってやるよ。一つだけな」
「はあぁ……う、嬉し、……」
 目元の涙を拭って大きく息をつき、伸ばした手で雀夜の髪に触れる。
「俺の……咥えて欲し、……雀夜の口で、気持ち良くして……」
「随分控えめな命令だな」
 言いながら俺の股間に顔を落として行く雀夜。熱い息がかかって胸が高鳴り、約束された快楽に体中が痺れ出す。
「──あぁっ!」
 先端から卑猥な音を立てて咥えこまれ、衝撃につい雀夜の髪を掴んでしまった。


「ああぁ……気持ち、い……雀夜、……溶けそ……」
 涎を垂らしてだらしなく喘ぐ俺を、上からカメラが覗き込んできた。力なく笑み、更に繰り出される甘い電流に眉根を寄せる。
「あぁ、っ……あ、あっ……。雀夜の舌、熱い──あっ、だめ! そんな、強く吸ったら……出ちゃ、……」
 空気と一緒に吸い上げられた瞬間、俺の腰がベッドから浮いた。反射的に逃げようとしたが、雀夜に両腿を抱えられているため身動き一つ取ることができない。
「あっ、あぁぁっ……! 出ちゃ、う……! イッちゃうから、ぁ……!」
 大股を開いたまま上体だけを捩らせ、シーツを強く掴む。痙攣する腰に反り返る足のつま先。強烈な刺激に耐え切れず、俺は雀夜の口の中で思い切りそれをぶちまけた。


「は、ぁ……あぁ、やば……」
 顔を上げた雀夜の口元から白い体液が少しだけ溢れている。今日二回目の射精なのに信じられないくらいの量が出たみたいだ。
「飲まなくていいよ……」
 荒い呼吸を繰り返しながら言うと、雀夜が自分の手のひらに俺の体液を吐き出した。やっぱり相当な量だ。それに濃い。こんなもの雀夜に飲ませる訳にはいかない。
「二回目の割には出た方だな」
「気持ち良かったから、……」
「まだ足りねえだろ」
 下着が脱がされ、雀夜もまた自分の服を脱ぎ出した。惚れ惚れするほど筋肉質で逞しくて男らしい体に、萎えた俺のそれが再び熱を持ち始めてしまう。
 手のひらに出された俺の体液が雀夜のそれに塗り付けられる。聞き慣れたはずの卑猥な音と一緒に、雀夜のそれがみるみる反応し出す。もう堪らなかった。昼間お預けにされていた分、雀夜が欲しくて欲しくて仕方ない。


「早く……お願い、雀夜」
 両脚を開いたまま入口部分を手で広げると、刺激を与えられていた時よりもずっとエロい気分になった。これまで何度となく受け入れてきた雀夜のペニスだけど、ここまで欲情してしまうなんて初めてかもしれなかった。
「ん、……」
 あてがわれた先端が熱い。上から俺を見下ろす雀夜の目も、吐息も、全てが熱くて灼き尽くされてしまいそうだ。
「あっ、あ……入って、……」
「エロい顔で煽ってんじゃねえぞ」
「雀夜、お願ぃ……俺、お願いが、あって……」
「何だ、……!」
 返事と同時に、雀夜が腰を深く入れてきた。


「あっ──! あ、あの……俺、名前、呼んで欲し……。名前呼んで、おめでとうって、言って欲しくて、……」
「………」
 元々鋭い雀夜の目が更に鋭く尖ったのは、俺が中で雀夜のそれを締めたからだ。仕事でもプライベートでも、雀夜はセックスの時必ずこの表情になる。獲物を喰らう猛獣の眼──体の中がゾクゾクして堪らない。
「んぁっ! ……お、奥、やばっ……あたって、……!」
「っ、……」
 突かれる度に跳ねる体、弾ける声。喉が反り返り、涙が溢れる。俺はベッドに付いた雀夜の逞しい腕に触れ、何度も頬を擦り付けた。
 雀夜とのセックスに限って言えば、正常位は俺が一番好きな体位だ。全てを包み込まれるような、支配されるような……。声で、表情で、体のうねりで、俺という男の全部はお前の物なんだと雀夜に分かってもらいたくて、他の体位よりもずっと気持ちに熱が籠る。


「雀夜っ、……そんな、したら、……イッちゃいそ、……」
「……桃陽」
「えっ、や、やだ……今そんなっ、……!」
 雀夜が上体を倒して、俺の耳元に囁いた。
「桃陽、誕生日おめでとう」
「やっ、お前、ずる、いっ……! ああぁっ、あ──」
 絶頂間近にそんなことを言われたら、耐えられる訳がない。耐えられないし、せっかくの雀夜の言葉にもちゃんと浸れない。俺をイかせる最後の一手としての囁き……雀夜は勝ち誇ったように笑っている。
「……ばか」
 雀夜が俺の腹に白濁液をぶちまけた所で、ようやく「撮影」が終わった。
 目の前がちかちかする。……でも、幸せだった。