サプライズ -4-

 茶髪が気まずそうに、だけどどこか嬉しそうに言った。
「実は、ここに来るまでにセンセーに見つかっちまったんですよ」
「センセー? って誰だ」
「一条先生っす。たぶん、もう来るかと……」
「は……」
 俺の頬を撫でていた遊隆の手が止まった。
「ゆ、遊隆……。誰なんだ、それ……」
「俺だよ」
 えっ。


 突然現れた長身の男。あまりにも予想外すぎて思考が追い付かない。だけど目の前にいるのは、紛れもなく──


「雀夜……」
 耳元で、微かに上ずった遊隆の声がした。
「俺に隠れて生徒だけで楽しんでるなんて許せねえからなァ。退学になりたくなきゃ、俺の言う通りにしろや」
 間違いない。この声、この口調。……雀夜以外に、あり得ない。
「おめぇらはもう行っていいぞ」
 微妙に着崩したスーツ。整えられた髪。だけどその鋭い眼光を宿した切れ長の瞳だけは、普段と少しも変わらない。
「は、はいっ」「失礼します!」モデルの二人も素に戻っている。
「………」
 遊隆の反応を伺う限り、どうやら彼も雀夜が来ることは知らされていなかったらしい。俺達にとって雀夜の登場は、これ以上ないサプライズだった。


「な、何しに来たんだよ……」
「授業だろ?」
 そう言って近付いてくる雀夜に、俺も遊隆も動揺を隠せない。だけどカメラは止まることなく回り続け、離れたところから松岡さんも俺達に向かって頷いている。
 遊隆が小さく舌打ちし、うんざりした口調で言った。
「……で。せんせー、俺らに何を教えてくれるんすか? 雪弥はもう一回出しちゃってるっすよ」
 俺はハッとして足を閉じ、慌てて前を隠した。
「そうだな……」
 雀夜が跳び箱の──俺の前にしゃがみ込む。
「ユキヤ、足開け」
「っ……」
 前にトイレの個室で言われたのと同じ台詞を吐かれ、瞬時にして顔が赤くなった。


「せんせーが足開けだってよ。ちゃんと言うこと聞かねえとな?」
 耳元で遊隆が囁いた。このあり得ない状況に、遊隆はもう適応している。
「う……」
 俺は覚悟を決め、少しずつ足を左右に広げた。ぐったりと萎えたペニスが雀夜の目の前であらわになり、体中に火が点いたような恥ずかしさに強く目をつぶる。
「情けねえな、あれだけヨガッてたのにもう萎えてんのか。こんなんじゃ咥える気も起きねえよ」
 雀夜が俺の根元を掴んで弄ぶように上下に揺らした。俺は遊隆の胸に背を預け、必死にそこから意識を逸らす。
「無理矢理でも勃起させてやろうか。一瞬でよ」
「遊隆っ……」
 助けを求めるように遊隆に顔を向けたが、遊隆は複雑な笑みを浮かべて雀夜を見ているだけだ。


 どうすればいいのか分からなくて黙っていると、雀夜がバスケットボールの入ったカゴの後ろから何かを取り出した。始めからそこに仕込んであったらしい。
「な、なにそれ……」
 片手で持てる大きさの怪しげな玩具。五〇〇ミリリットルのペットボトルのような形をしている。底が空いていて、見た目は俗に言うオナホールに近かった。松岡さんから道具を使うと聞いた時はバイブか何かを想像していたけど、どうやらそれとは違うらしい。
「遊隆。コイツを扱いて勃たせろ」
「えっ……」
「おっけ」
 遊隆が俺のそれを背後から握り、上下に擦り始める。
「やっ、あ、遊隆……!」
「ある程度の硬さになったらそれでいいぞ。イかせんなよ」
 雀夜はつまらなそうに言いながら、そのペットボトルのような物を逆さにして、中にローションを垂らしている。やっぱりあれを俺のモノに被せて使うのだ。一体、手でされるのとどう違うのだろう。


「さすが若いな、雪弥。すぐ勃ったじゃん」
 遊隆はソレが具体的に何なのか分かっているらしかった。
「面接の時、雪弥に言っただろ。フェラよりもっと気持ち良くなる方法……」
「……、うん……」
「今からしてやる。──雀夜」
 遊隆が嬉しそうに笑って俺のそれから手を離し、雀夜に合図を送る。
「遊隆は昔コレやられて、あっという間にイッたっけな……。小便垂れ流してヒクヒクしてた」
「うるせえな、いちいち覚えてんじゃねえよ」
「ユキヤは何分我慢できっかな?」
 ニヤニヤと笑う雀夜と遊隆。俺の両手は遊隆にしっかりと固定され、何が起きても逃れられない状態になっている。なんだか本当に二人にレイプされてる気分になって、開いた足が微かに震えた。


 雀夜が俺の先端にカップをあてがう。
「……んっ」
 亀頭の部分を生温かい物が包み、続けて一気に根元まで下ろされた。ぐにゃぐにゃとした感触。気色悪さすら感じる細かな凹凸が、ぴったりと俺のペニスに吸い付いてくる。
「どうだ?」
 雀夜が不敵に笑った。
「気持ち、いい……」
 俺が呟いた言葉を聞いて、耳元で遊隆も笑う。
「……ん……ぁ」
 そのまま雀夜の手によって上下に動かされ、俺は頬を染めて唇を噛みしめた。


 だが、次の瞬間。


「ひっ、あ──あぁぁっ!」
 突然、カップの内側にびっしりと付いた凹凸が横に高速回転し始めた。
「やあぁっ! あっ、あ! うあっ──」
 雀夜の手元で光る小さなランプ。耳障りなモーター音。激しく回転し、ペニス全体に強烈な快感をもたらす凹凸。何が何だか理解できないのに、声ばかりが喉奥から飛び出す。
「やっ、やだっ! 止め……て、無理だからっ……あ!」
 無論、雀夜はスイッチを切らない。遊隆も俺の両手を放さない。
「ふあっ、あ、あぁっ! 嫌っ……やだっ、やだっ!」
 ギュルンギュルンと音を立てて俺の先端から根元までを蹂躙する回転式オナホール。頭がおかしくなりそうなほどに気持ちいい。涙と涎が止め処なく溢れ、抵抗する気力すら奪われてゆく。


「雪弥、すげえ可愛い」
 遊隆が俺の両手を解放し、背後から俺の乳首を抓った。
「はぁっ、あ……。んっ、ぁ……」
「雀夜。雪弥の体寝かせるぞ」
「おう」
 跳び箱の上に仰向けにされ、俺はスタジオの天井を仰いだ。カメラが俺の顔を覗き込む。これが撮影だとすっかり忘れていた……。
「エロいな」
 遊隆の喉が鳴るのが分かった。俺の胸元に唇を落とし、乳首を口に含まれる。
「んあっ、あっ、ああぁ……」
 気持ちいい。気持ちいいけど、下半身への刺激が強すぎて遊隆の愛撫が霞んでしまう。


「ゆた、か……。キスして」
「いいよ」
 上から唇を塞がれ、俺から舌を差し入れた。こっちの方が、愛撫されるよりずっと興奮する。
「ん、んっ……。んんぅ」
「なんだお前ら、妬ける」
 雀夜の不機嫌な声が聞こえた。
「んやっ! あっ、んあぁっ……!」
 恐らくスイッチを切り替えられたんだろう。カップの回転の方向が変わった。
「あぁぁ……、あっ、だめ……!」
「雪弥……」
 遊隆と舌を絡ませながらも、声が止まらない。
「溶けちゃ、……雀夜、溶けちゃ、う、からぁっ……! もうそれ、止めっ……」
 カップの隙間から、だらだらと液体が溢れてくる。誓って言うが、俺にその感覚は一切なかった。
「あ……」
「既にイッてるし、やっぱお前も漏らしたか」
 そこでようやく雀夜が回転を止めてくれた。カップを外されてもまだペニスがじんじんしていて、感覚がない。


「小便漏らすぐらい良かったってよ」
 わざわざ教えなくていいのに、雀夜が汚れたところをタオルで拭きながら遊隆に言う。
「雪弥……」
「………」
 恥ずかしくて仕方ない。こんなことまでしなきゃいけないなんて、俺はこの仕事を甘く見過ぎていた。
「遊隆、お前もそろそろ限界なんじゃねえの?」
「……さっきから前張って痛てぇ」
「出せよ、ユキヤに咥えさせろ」
 遊隆が自分でベルトを外してズボンと下着を同時に下ろす。


 俺はやっとの思いで跳び箱から上体を起こし、へなへなとマットの上に座り込んだ。俺の傍らにしゃがみ込んだ雀夜が、体操着を脱がしながら誰にも聞こえないくらいの小さな声で囁く。
「トイレでのこと思い出せ。できるな?」
 コクリと頷き、俺は跳び箱に腰を下ろした遊隆の股間に顔を埋めた。
「んあ……」
 尖らせた舌先で、遊隆の屹立したペニスを根元からなぞる。それから舌全体を使って舐め回す。遊隆は俺の髪を撫でながら息を荒くさせ、時折苦しそうな声を漏らした。
「んっ」
 個室で雀夜にされたバキュームを思い出しながら、遊隆の亀頭を口に咥える。
「うぁっ、雪弥……ぁ!」
 そして、とにかく吸いまくった。空気と唾液、遊隆のガマン汁……。ズルズルと音をたてて全部を一気に吸い上げた。
「やべぇ……雪弥、超気持ちいっ……」
「簡単にイくなよ遊隆。ユキヤに挿れる前にイッたら終わりだぞ」
 雀夜は腕組みをし、壁にもたれて俺達を観察している。


「我慢できねっ……。雪弥っ……」
「ふぁっ……!」
 遊隆が俺の頭を押さえてペニスから引き離した。
「あ……」
 今にもはち切れそうなほどに勃起した遊隆のそれを目の当たりにして、俺の下半身が疼きだす。俺はマットの上にべったりと座ったまま体を震わせ、遊隆を見上げて振り絞るような声で言った。
「挿れて、遊隆……今すぐ、俺の中……」
 すると突然伸びてきた雀夜の手が、後ろから俺の前髪を緩く掴んで上を向かせた。
「先輩に対する口の利き方がなってねぇな。もう一度ちゃんと言ってみろや」
 浩司さんにセットしてもらった髪は既にぐしゃぐしゃになっている。俺の顔も涙でぐしゃぐしゃだった。


「ゆ、遊隆先輩……俺の中に、……挿れて下さい……」
 俺を見下ろす遊隆の目は、微かな興奮の色に揺らいでいる。