雪弥 -3-

「後ろは使ったことあんのか?」
「……あるよ。自分でなら」
 えっ、と耳元で遊隆の声がした。
「一人でする時とかに……」
「マジかよ、お前エロいな。自分でケツいじって感じるのか」
「相手がいなかったからね」
 自嘲気味に笑うと、遊隆は唇の端を緩めて俺の額に軽くキスをしてくれた。


「楽しみだな、雪弥がどんな風に乱れるのか興味ある」
 低い声でそんな言葉を囁かれると、それだけで昇天しそうになる。早く体に触れてほしくて、俺は遊隆のその部分にあたっている自分の腰をヒクリと動かした。
「腰動いちゃってるぞ」
「は、早く……」
「がっつくなって」
 言いながら、遊隆が俺のシャツの中へ手を滑らせる。大きな手のひらは温かく、肌を撫でられるだけで頬がカッと熱くなった。


「んっ……」
 ふいに右側の乳首を指で弾かれる。
「くすぐってえか?」
「あ……、あ。なんか変……」
 俺の反応を伺いながら、遊隆がシャツを捲りあげた。そのまま左の乳首に遊隆の唇が被せられる。
「ん、ぁっ……あぁっ……」
 俺は遊隆の金髪に指を絡ませ、小さく身をくねらせた。唾液を絡ませながら乳首を吸われ、右側の乳首は指でねちっこく揉まれている。
 静かな部屋に響くいやらしい音と、俺の濡れた声。……恥ずかしくて、気持ちいい。


「やっ、あ……ぁ」
「感じやすいな。乳首だけで勃起してるぞ」
「ん……なんか、こういうの、気持ちいいかも……」
「なんだよその反応。俺の方が興奮する」
 遊隆の手が俺のベルトにかけられた。あっけなくジーンズを脱がされてあらわになった下着の表面を、遊隆の指先が這う。
「すげえ勃ってる」
「あっ」
 焦らすように曲線を指でなぞられて、俺は思わず腰を浮かせた。


「雪弥、どこ気持ちいい?」
「先端の……」
 ボクサーパンツがずらされ、俺の一番敏感なその部分がちらりと顔を出す。遊隆は自分の人差し指を唾液で濡らし、それをそのまま俺の先端に押し付けた。
「やっ……」
 割れ目をこねるように遊隆の指が動く度に、ゾクゾクとした快感が俺の全身を這いまわる。
「あ、あ……。そこ無理、俺っ……」
「無理か。じゃあ違うことしようか?」
 脱がされた下着がベッドの端に放られる。ついでにシャツも脱がされて、俺は完全に裸になってしまった。


「雪弥お前、痩せてんなぁ。ちゃんと飯食ってんのか?」
「ん……」
「体力仕事だからな。健康第一だぜ」
 遊隆も自分の服を脱いでゆく。俺は仰向けの状態でそれを見ていた。
 見事に割れた腹筋。太い上腕、盛り上がった胸の筋肉……。遊隆の肉体は想像した通りに「男」だった。
「………」
 露出したその部分に、俺は思わず唾を飲み下す。遊隆のそれもかなり反応していたが、俺なんかとは比べ物にならないくらいにでかかった。本当にあれが俺の中に入るのだろうか。その時、俺は無事でいられるのだろうか。
「凄いな、遊隆」
「え? ……ああ、見過ぎだぞ雪弥」


 小さく笑いながら、遊隆が俺の両膝に手を置いた。そのままゆっくりと左右へ開き、露出した部分に顔を落としてくる。
 もちろん、そんなことをされるのも初めてだ。
「──あっ! ゆ、遊隆ぁ、あっ……!」
 生温かい遊隆の口の中、燃えるように熱い舌が絡んでくる。中でビクつく俺のそれも、相当に熱い。
「やぁっ! あっ。あっん、あ……」
 音をたてて吸い上げられ、耐えきれず内股が痙攣した。身をよじればよじるほど、遊隆の口がより深く俺のそれを咥え込む。どうしようもないほど熱くて、今にもとろけてしまいそうだった。
「あー……、あー」
 もはや喘ぎ声とも呼べないような声しか出ない。頭の中が朦朧としてきて、俺は涎を垂らしながらホテルの天井をぼんやり見つめていた。


 それからしばらく、我ながらよく我慢した方だと思う。ふいに顔を上げた遊隆が俺の表情を見て笑った。
「どうした、雪弥。大丈夫か?」
「イきそうだった……。すげえ気持ちいい……」
「もっと気持ち良くなる方法もあるんだけどな、今はやってやれねえのが残念だ」
「どんな方法……?」
「秘密」
 俺はなんとか上体を起こし、意味ありげに笑う遊隆を上目に見つめて言った。
「……俺も、遊隆の咥えてみてもいい……?」
「いいけど、やったことあるのか?」
「ない……けど」
 採用されたい気持ちももちろんあるが、それよりも今は遊隆に気持ち良くなってもらいたい。単純にそう思った。


 恐る恐る、遊隆の屹立したそれを握ってみる。それから雄々しく勃ち上がったペニスに顔を近付け、伸ばした舌で先端に触れた。
「ん……」
「ゆっくりでいい。無理すんな」
 咥えても根元までは口に入りそうにない。仕方なく亀頭の部分に唇を被せ、舌で舐めながら軽く吸ってみた。
 あぐらをかいた状態の遊隆がそのまま手を伸ばし、四つ足で立つ俺の乳首を抓る。
「んっ、ん……!」
「段々エロい気分になってくるだろ。乳首揉んでてやるから、フェラ続けてみろ」
「はぁっ……あ、あ……」
 呼吸が荒くなり、俺は遊隆のそれを根元から丁寧に舐め回した。それから再び先端を口に含んで、赤ん坊のように音をたててしゃぶる。遊隆のガマン汁も自分の唾液と一緒に飲み込んだ。頭がクラクラしてくる。


「やべえな、挿れたくなってきた」
 遊隆の呟きに、俺はハッとしてそこから顔を上げた。
「い、挿れていい……。俺、頑張れると思う」
 訴えるように俺が言うと、遊隆が少し驚いた表情をした。無理もない。経験のない奴が自分からそんな台詞を言うなんて、普通じゃあり得ない。
 もちろん怖いという思いはある。だけど採用されてもされなくても、どうせいつかは誰かと経験するのだから、初めては自分の理想のタイプと。そんな計算高い思いも働いていた。
「雪弥、お前本当に初めてか?」
「う、うん」
 苦笑した遊隆に小さく頷いてみせる。なんだか自分がすごく淫乱に思われたんじゃないかと思って、今更ながら恥ずかしかった。