トラップ -6-

「ネオンさんは、海外で活動したいんですね」
「うん。俺をこの道に誘ってくれた先輩がいるって、前に言ったよね。その人が試しにUKのクラブオーディションに出てみないかって、現地から連絡くれたんだ」
 ネオンの声は明るかった。
「それで、さっき話してた人が先方に送るための映像を撮ってくれるって」
「そうなんだ。……偉音は、知ってたの?」
 訊ねたが、偉音はむくれた様子で窓の外に顔を向けている。知ってはいたが納得はしていない。そんな顔だ。
「いつ向こうに行くんですか?」
「再来週に一度行って、上手く行ったら今後のことはその場で考えようかなって」
「じゃあ、もしかしたらしばらく会えなくなるかもしれないんですか」
 駅から近い都市ホテル前でタクシーが停車する。ネオンが浮かべた笑顔は少し寂しそうだった。

 ネオンは寂しいし、偉音は本当は行って欲しくないけど……自分の道を自分の足で歩むためには避けて通れない、それが別れというものだ。
 ネオンの夢が叶うかもしれないこと。それに対して偉音が喜んでいない訳がない。一番近くで互いを見てきたのだ。同じ世界に身を置く者同士、苦楽を共にし高め合ってきたのだ。
 嬉しいけれど、行って欲しくない。それは偉音のワガママではなく、ネオンが好きだからこそ抱く気持ちだ。こんな場面では誰しもが持つであろう複雑な気持ちだ。

 友達がいるって、いいな。
 寂しそうな二人を見て、心底からそう思った。