トラップ -5-

 大暴れする偉音を取り押さえ、ネオンと二人渾身の力を込めて接待部屋から引きずり出す。途中、ネオンが茫然とする青年達にも部屋を出るよう声をかけ、接待部屋の扉を何とか押し開いた時には既に二十分が経過していた。


「放せネオン、──宇咲っ!」
 騒ぎに気付いて駆け寄ってきたアンナさん他偉音の仲間達が、俺達に加勢して偉音を引きずってくれた。
「偉音、貴様……ふざけた真似しやがって……」
「飯島ぁッ──!」
 よろめきながら部屋から出てきた飯島を見た瞬間、再び偉音が激昂した。
「あ、あんた、これ以上偉音を煽るなっ!」
 思わず叫び、偉音を強く抱きしめる。大袈裟かもしれないが、このままだと偉音が本当に飯島をどうにかしてしまうんじゃないかと思い……怖かった。
「ネオン! 取り敢えず偉音連れて外へ出ろ!」
 ホスト風のキヨマサさんが叫ぶと同時に、ネオンが──ではなくアンナさんが、偉音を担ぎ上げて「行くぞお前ら!」と俺達に叫んだ。野太くて漢らしい声だった。

 事情を知らない他のゲストが茫然としている中を、アンナさんが叫ぶ偉音を担いでドスドスと走る。ネオンがそれに続き、俺もまた「お騒がせしました」と頭を下げながら彼らを追いかけた。
 運良く停まっていたタクシーを拾い、アンナさんが後部座席に偉音を投げ込む。
「後のことは私達に任せてちょうだい。ネオンちゃん、後で連絡するわ」
「……ありがとうアンナちゃん」
「宇咲ちゃんもこの子をよろしくね」
「は、はいっ!」

 走り出したタクシーの中、ネオンが憔悴しきった声で「一番近いホテルまでお願いします」と運転手に告げた。
「………」
 偉音は大人しくなっていたが、声をかけるのが躊躇われるほどにその顔はまだ強ばっている。
 ともあれ、俺は胸を撫で下ろしてシートに深くもたれた。まだこれからどうなるかは分からないけれど、偉音には……いや、偉音とネオンには、心強い味方が大勢いる。俺が知らなかっただけで、この二人はこれまで厳しい道を歩んできたと同時に多くの運にも恵まれていたんだ。

「……ネオンさん、大丈夫ですか?」
 ネクタイを緩めるネオンに声をかけると、疲れた様子ながらも明るい言葉が返ってきた。
「うん。俺は囮みたいなモンだったから、そういう意味では指一本触られてないよ」
「その前に話してた人は、誰だったんですか?」
「映像関係の会社の人で、俺を買ってくれてる人だよ」
 やっぱり仕事の話だったんだ、と俺はほんの少し気落ちしていた。

 偉音とネオンが常に二人で組んでいる訳じゃないというのは分かっていたけれど、何となく……二人がバラバラになってしまうのが寂しかった。
 飯島は「二人正式に組んで」と言っていた。その点だけは、俺もそうして欲しかった。
 ……もちろん、二人には言えないけれど。