意外な気持ち -7-

「なるほど、君はこの業界に入るつもりはないのかね?」
 喋るなという偉音の言葉を思い出した俺は、飯島の質問に何度もうんうんと頷いた。
「勿体ないことだな。初めてのステージであれだけ物怖じせず全てをやり切ったというのに」
 あれは偉音がいたからだ。ネオンがいてくれたからだ。ついでに言えばあの時の俺は、偉音の命令を聞くしかなかったからやっただけだ。


「それに、オーナーには言ってませんでしたが宇咲は俺の男です。貴方が宇咲とヤりたい連中から幾ら貰ってるか知りませんけど、こいつを接待の道具に使うのは勘弁してくれませんかね」
「……話が違うな、偉音」
「俺もネオンも貴方からの支援を打ち切られても良いと思ってる。これまでのことには感謝してますけど、俺達もそれなりの見返りを渡してきたはずだからその辺はチャラにしてあげますよ」
 ついに偉音が話の核心に触れ、俺は体を緊張させた。上目線で物を言う偉音に内心ヒヤヒヤしたが、そこまで偉音が堂々としているならきっと俺が不安に思うことなどないのだろう。

「自分で何を言っているか分かってるのか。私に楯突くということは、この界隈では今後一切仕事が出来なくなるということだぞ」
「分かっている」
「お前達と繋がりのある店も全て潰す。私を甘く見るなよ偉音」
 いやな奴だな。俺は黙ったまま飯島を睨み付けてから、この状況をどうするのかと今度は偉音に視線を向けた。
「貴方が何を思おうと、もう好きにはさせねえ」
「お前如きにそんな力があるとは思えんな。調子に乗るなよ偉音」
「調子に乗ってたのはそっちの方でしょ」
 そう言って、偉音が自分のスマホを開いて正面に向けた。
「これまで貴方に渡してきた『少年達』のリストだ。確認しな」
 それを目にした瞬間、飯島の顔が見た目にも分かるほど青ざめていった。
「偉音、貴様……」
「そんな訳なんで、今後は俺達に構わないでくれますか。俺からの話は以上です。行くぞ、宇咲」
 悔しそうに歯ぎしりする飯島を残して、俺は偉音と共に部屋を出た。

「………」
「どうした?」
「さっきのって、未成年者を斡旋したってことだろ。それって、偉音も罪になるんじゃ……」
 俯く俺の頭に大きな手が乗り、優しく撫でられた。
「ブラフに決まってんだろ。奴らは知らねえけど、今まで渡してきたのはれっきとしたプロの男達だ。金積んで、素人の演技をするように頼んでな」
「そ、そうなの?」
「いずれバレるだろうが、取り敢えず今はこれでいい。どうだ、お前の男はなかなか頭が切れる奴だろ」
「………」
 肩を抱き寄せられ、頬に唇が押し付けられる。つい偉音を睨んでしまったが、胸は高鳴る一方だった。
「よし。それじゃ、ネオンを回収して帰るぞ」