意外な気持ち -4-

「よう、見てたぜ偉音、先々週のクラブ」
 金髪を逆立てたホストクラブの代表みたいな人が、偉音と俺の肩を抱いてニヤつきながら言った。
「彼にイチから仕込んで主従関係に持ち込んで、そのまま自分の男にしちまった、ってことか。ロマンチックじゃねえけど、まあまあ劇的だねえ」
「暑苦しいっす、キヨマサさん」
「いいじゃねえか、お前と俺の仲だろ!」
 ぐりぐりとほっぺたを擦り寄せてくるキヨマサさんが、そのまま俺達をより一層強く抱いて言った。
「気を付けろよ偉音。大事なカレシ、しっかり守ってやれ」
「………」
「さっきからひっきりなしに素人っぽいのが奥の『接待部屋』に連れてかれてる。奴らがお前の男に目ぇ付けてんのは知ってるんだろ」
「ああ、勿論」
 頷いた偉音の額に、キヨマサさんが自分の額を押し付けた。
「覚悟してんならそれでいい。心配するようなことじゃねえって、お前も分かってるだろうし」
 幸運を! とキヨマサさんが俺達を解放する。
 俺は何も言えなかった。

 クラブで俺を見たスケベな野郎共が俺にちょっかい出そうとするから、偉音の傍にいてそれを阻止するだけ──そんなふうに軽く考えていた。
 マワされるなんて言っても、集団でセクハラしてくるとかそんな程度だと思っていた。
 だけど、想像していたよりもずっと事態は深刻らしい。それまで熱かった頬や体が急激に冷めてゆくのを感じた俺は、偉音の腕にしがみついて唇を噛んだ。

「俺の傍にいれば大丈夫だ。堂々としてろ」
「でも、何で俺なんかが」
「ステージでの従順さが気に入られたんだろ。てめえらも同じように躾けられると思ってる」
「……俺は偉音にしか従えないのに」
 無意識のうちに呟いていた。そんな俺を見下ろしながら、少しだけ偉音の表情が柔らかくなる。
「あ、いや今のは別に……。だ、だって知らないオッサン達にセクハラされるなんて、誰だって嫌なはずだろ」
「自爆して焦ってんじゃねえよ」
「違うってば! ……ていうか、そんな危険な場所なら始めから俺は来ない方が良かったんじゃないの? 偉音に余計な手間かけさせてるし」
 金だって会って受け取って終わりにすれば良い話だし、そもそもどうして俺がオーナーに紹介されなければならないのかも分からない。始めから住む世界が違うんだから、黙っていれば会うこともないだろうに。
「お前を横に置いて直接言いたかったんだよ、飯島の野郎に」
「何を?」
「宇咲に手を出すなら、あんたとは決別するってな」