亜利馬、AVモデルになる -5-

「潤歩。彼はウチの新人の亜利馬だよ。俺達と同じグループになるから仲良くしてやってよ」
「新人だ? こいつが?」
 潤歩が俺を指さして言った。その腕にはブレスレットやらストーンやらがじゃらじゃらと付いていて、爪には黒いマニキュアが塗られている。ウルフというより悪魔みたいな男だ。
「クソチビのガキじゃねえかよ。レーベル間違えてんじゃねえの」

 物凄い言われようにムッとなったが、残念ながら俺には、こんな怖そうな男に口答えできるほどの度胸はない。仕方なく黙ったまま俯くと、獅琉がこの悪魔──潤歩の肩を叩いて「まあまあ」と宥めてくれた。

「亜利馬は確かに『ボーイズ』向けって感じだけど、岡崎さんがスカウトした子だから間違いないと思うよ。大雅たいがだって始めはどうなるかと思ったけど、ちゃんとメインのレーベルで頑張ってるじゃん」
「大雅はもっと大人っぽかっただろうが。第一印象もこんなガキじゃなかった」
「とにかく契約もしたし、決定事項だから文句は駄目だよ。それに、山野さんだって納得してたんだからさ」
「……クソが」
 言い返せなくなった潤歩が俺を睨み、吐き捨てるように言った。
「一発目に俺と絡ませろよ。二度とメインに出ようなんて思わなくさせてやる」
「それは会社が決めることでしょ」

 獅琉が良い人だった分、潤歩の怖さが余計に際立ってしまう。俺は体の前で両手を組み、教師やバイト先の店長に叱られているような気持ちになってひたすら俯いていた。とにかく無言でやり過ごすしかないと思ったからだ。

 ……だけど、メインとかレーベルとかって、一体何だろう。ひょっとしたら同じグループでも弟分的な立ち位置のものとか、そういうのがあるんだろうか。確かに獅琉と潤歩を見る限りだと、俺よりも少し年上のお兄さん系というジャンルに属しそうだ。この二人と比べたら俺はガキっぽいし田舎っぽいし、決して同じ毛色ではないかもしれない。

 潤歩が怒るのも当たり前なのかな。

「………」
「ほら、亜利馬が黙っちゃったよ。潤歩言い過ぎ。謝ってあげなよ」
「ざけんな。おいガキ、お前この業界初めてなんだろ。何でまたやろうなんて気になった」
 潤歩に質問──というか詰問されて、俺は縮こまったまま呟いた。
「……子供の頃から、憧れてたからです」
「はぁ?」
「ずっと俺も、……才能なんてないけど、やってみたいって思ってて。大変なこと沢山あると思うけど、簡単な気持ちでやろうと思ったわけじゃありません。俺は俺なりに考えて、親とも相談して、絶対に頑張るって決めて、上京してきました」

「………」
 獅琉と潤歩が茫然と俺を見ている。二人とも口が開いていた。
「頑張ります。何もかも初めてだから、上手くできるか不安ですけど……。皆さんの足を引っ張らないように努力します。なので一緒にやらせてください。何でもします……お願いしますっ!」
 二人に向かって勢いよく頭を下げ、きつく目を瞑る。精一杯の気持ちをぶつけたつもりだった。すると──
 ふいに、「ぷっ」と獅琉が噴き出して笑った。