変化

 偉音が唇の間から舌を覗かせて笑った。
「宇咲。俺の目を見ろ」
「あ、……」
 頬に触れた偉音の手が俺の顔を横に向かせ、至近距離で目を覗き込まれる。
「俺の目だけを見てろ。それくらい出来るな」
 鋭い瞳が照明の色で赤にも青にも変わる。猛禽類の如く爛々とした偉音の目に捕えられた俺は、何か言い返すどころか視線を逸らすこともできなかった。
「いい子だ」
 視線を繋げたまま、偉音が愛おしむように俺の頭を撫でる。

「そのままだぞ」
「──ひっ、やっあぁっ……!」
 偉音の目に気を取られていたら、突然、玉座の左側で片膝をついていたネオンが俺の乳首にむしゃぶりついてきた。熱い舌と唾液がいやらしく絡んでくる。さっきまで偉音に弄られ敏感になっていた乳首を激しく愛撫され、つい顔ごと視線をそちらへ向けてしまった──が。
「宇咲」
 すぐに偉音の手が俺の髪を緩く掴み、自分の方へと顔の向きを戻させる。その間もネオンの愛撫は続き、きつく結んだ口元から息が漏れてしまう。
 両脚を固定され、顔は偉音に固定され……唯一自由にできるはずの両手なのに、震えるばかりでちっとも動かない。

「い、や……もう、んぁっ! やめ、て……お願、……あぁっ……ん!」
 情けないほどの濡れた声。レザーパンツに抑え込まれている俺のそれは、布越しに痛いほど屹立していた。ずきずきと脈打ち刺激を求めているのが分かる。俺はネオンに乳首を吸われながら腰を浮かせ、偉音の目をひたすらに見つめ続けた。
「はぁ、っ……、あ、……」
 息が弾み、頬を汗が伝う。偉音はただじっと俺の目を見ているだけで、体には触れようとはしてくれない。

 ──「してくれない」って何だ。

「い、いお、……」
「腰動いてるぜ宇咲。エロい体ビンビンに反応してんじゃねえかよ」
「やっ、……やだ、あっ、偉音──」
 触れて欲しい。
「お願、ぃ……」
 だって俺は知ってるんだ。前に一度偉音に抱かれた時の、あの感覚を。知ってるし覚えている。あの蕩けるような舌と指の動き、痺れるような快楽──。

 もう、誰に見られているとかどうでもいい。どうせこっちから客の顔は意識しない限り見えないんだ。二度と会うこともないだろうし、そんな我慢や恥ずかしさよりも今この瞬間、体は偉音の愛撫を欲していた。
「偉音、……あっ、……や、ぁ……」
「だいぶ蕩けてきたね。偉音が言った通りだ」
「──い、あぁっ!」
 ネオンの指先が、つ、と俺の盛り上がった部分に触れた。たったそれだけの刺激で泣けるほど切ない声が出てしまう。
「そろそろ外部音声に切り替えるよ」
「ああ」
 ネオンが何かの合図を出したのだろう。瞬間、俺の激しい息使いがフロアのスピーカーから大音量で流れ始めた。
「もう少しだけ頑張ってね。そしたらウサちゃんのココ、もっと気持ち良くしてあげるから」
「目を逸らすなと言ったはずだぜ、宇咲」
 二人の声は変わらずインカムに通るだけだ。それなのに、俺の声だけが……
「やっ、あぁっ……! もう、無理……! あっ、ん……、くすぐ、らなぃでっ……!」
「何が無理だって?」
「き、気持ち、い……から、ぁっ……! じんじんする、……イッちゃう、からっ……あぁ!」