囚われの操りドール -4-

 何で、何で、どうして。
 どうして俺がこんな恰好をする羽目に。
「サイズぴったりだな。似合ってるぞ宇咲」
 こんなの、胸と股間を隠してるだけの露出狂だ。気持ちは全裸と殆ど変わらない。
 シマさんの店で買った衣装はカッコよかったのに。土壇場で変更になるなんて聞いてない。

「じ、辞退します」
「そんじゃ、控え室に移動するぞ。喉渇くだろうから水持ってけ」
「偉音っ!」
 自分はロングのレザーパンツでキメてるくせに。黒のスリーブレスシャツから逞しい腕を覗かせて筋肉アピールしてるくせに。
「ちょっと、マジで……ほんとに! 一旦!」
 偉音の腕を引っ張って何とか楽屋に留まらせようとしたが、逆に腕を掴まれてずるずると楽屋から引きずり出されてしまった。

「あ、宇咲くん似合ってるね。凄い可愛いよ!」
「全然嬉しくないです!」
 控え室にいたネオンの衣装も偉音とほぼ同じものだった。ただ一つ違う部分と言えば、俺が被るはずだった軍帽を被っているということだ。
「どういうことか説明して下さい!」
「こっちの方がイメージに合うと思って、ギリギリまで悩んで変更した。以上だ──何か言いたいことはあるか」
「……割と」

 俯く俺の傍にネオンが来て、「大丈夫! 自信持って」と肩を叩かれ……それから、耳にイヤホンのような物を取り付けられた。
「俺達の指示はインカムで聞いてね。そんな難しいことは言わないから安心して」
「はあ」
「ここまで来たらやるしかねえだろ。辛気臭せえ顔すんな」
「はあ」
「終わったらファミレスで美味しいもの食べよう! 俺は今からそれが楽しみ」
「………」

 どうやら逃げ道はなく、偉音の言う通りやるしかない。死ぬほど嫌だけど、ここで俺が駄々をこねたって二人を困らせるだけで何も変わらないんだ。
「宇咲くん、大丈夫?」
「はあ。もうどうしようもないんで行きますけど……」
「その意気だ、頼むぞ」
 時刻は零時四十五分。本当に、もうそろそろだ。
「偉音さんネオンさん、スタンバイお願いします!」
 開いたドアからスタッフが顔を覗かせ、言った。ネオンが偉音に向けて頷き、偉音が俺の手を握る。
「俺達を信じろ。お前の初舞台、最高のステージにしてやる」
「………」
 真顔でそんなことを言われて、不覚にもカッコいいと思ってしまったじゃないか。

「行くぞ」