囚われの操りドール -3-

 それから出番まで少し仮眠を取れと言われてソファでうとうとしていると、夢現の中で偉音とネオンの会話が聞こえてきた。

「マイクとカメラの最終チェックはどうだった」
「問題なかったよ。やっぱピンマイクにして正解だと思う。カメラは固定だけど、盆が回った時はその方が綺麗に見えるかもね。あとはウサちゃん次第かな。張り切ってくれてるけど、やっぱ本番はビビっちゃうだろうし」
「まあ想定内だけどよ、いざとなったらリングギャグだな。一応用意しとけ」
「あいさー」

 リングギャグって何だろう。ボールギャグなら知ってるけど、まさかなぁ。
 いやいや、そんなことよりも。……やっぱり、成功させるには俺の頑張りにかかっているみたいだ。
 ちゃんとやらなくちゃ。偉音をがっかりさせたくない。俺だって大人なんだし、腹を括ったからには全力でやる。仕事でも言われたことをやるのは得意な方なんだ。偉音とネオンの最高の引き立て役として、俺は俺の仕事をするだけ。──絶対、できる。

「宇咲、起きろ」
「ん、……何時……?」
「零時だ。衣装合わせるからコッチ来い」
 一瞬何のことかと思ったけれど、すぐに事態を飲み込んで俺はソファから飛び起きた。
 零時。もう? 十分くらいしか寝てないと思ったのに、本番まであと一時間しかないじゃないか。
「ご、ごめん眠りこけちゃって……!」
「大丈夫だ。むしろ頭がすっきりしただろ。水飲め、もっと頭が冴える」
「ありがとう、偉音……」
 受け取ったボトルをあおり、冷たい水を喉に流し込む。確かに何だかシャキッとした気分だ。相変わらず心臓は早鐘を打っているけど、今では不安よりも期待の方が大きい。わくわく感から意味なく笑顔になってしまう。

「この前買ってた服だよね? もう着替えておいた方がいいのか。そういえば、ネオンさんは……?」
「ネオンは別室で電話してる。──それで、お前の衣装だけどちょっと変更になってな」
「え?」
 偉音が部屋の隅にあったダンボール箱から綺麗に畳んだそれを取り出し、俺に渡してきた。

「………」
「着替えろ」
 明らかに軽い。薄い。布切れを数枚持ってるような感覚だ。
 嫌な予感がして、上の一枚を広げてみる。
「こ、こ、これって」
 紛うことなき布切れだ。素材はストレッチの効いたレザーだけど、形はどう見ても布切れ一枚……が、輪っかになっている、としか言いようがない。
 あれだ。夏に女の子が着るベアトップ、チューブトップの類だ。しかもめちゃくちゃ短い。胸を隠してヘソが出る、もはや水着だ。
「これは俺、……」
 無理かも。続く言葉を発する前にもう一枚を広げてみると、それは尻が半ケツになること間違いなしのホットパンツだった。
「………」
「時間がねえ、着替えろ」
「い、いやいや。だってこれ、始めの衣装と全然……」
「着替えろ」
「……どうしても? 絶対? 決定?」
「着替えろ」
「………」
 夢なのかな、これはもしかして。
「い、……」
「宇咲」
「嫌だあぁ──っ!」
「着替えろ」