偉音との再会、ネオンとは初対面 -7-

 ホテルで紙袋を渡された俺は、脱衣所で怖々中身を覗いて……心の底から安心した。
 中に入っていたのはレザーのベストと、あの日クラブで偉音が穿いていたのと同じようなロングパンツ、それから軍帽みたいな形の洒落た帽子だったのだ。
 露出度は低い。上はベストだけど極めて問題ない。良かった。偉音とシマさんはちゃんと俺のことを考えていてくれたんだ。

 照れ臭く思いながらもそれを着て、鏡に自分を映してみる。少しキツいけど多少伸縮する素材だからかサイズ感もぴったりだ。
「ど、どうかな?」
 部屋で待っていた二人の前におずおずと進み出て、両手を広げてみせる。ネオンは「いいね!」と言ってくれたけど、偉音からは「ぎこちねえな」と笑われてしまった。
「いいよ、宇咲くん。これで本番もバッチリだよ!」
「あの、本番ていつでしたっけ?」
「今月末の金曜、夜十時スタートだよ。他にも何組か出るから、俺達の出番は日付変わって土曜の一時くらいになるかも」
「お前、土日も仕事だろ。遅くなっても大丈夫か? 終わってからも打ち上げとかあるかもしれねえし」
「月末ならギリギリ休み取れるかも。……それで、肝心の内容だけど。俺は何をすればいいの?」

 ここに来るまでの車の中で、俺は偉音&ネオンのショーに脇役として簡単に出演するだけだと説明を受けた。当然ながら主役は二人だ。それだけに失敗する訳にはいかない。出来れば綿密な打ち合わせをしておきたかった。
「前も言ったけど俺、ダンスとかは出来ないし……」
「大丈夫だよ。宇咲くんはそこまで動く必要ないから」
 言ったのはネオンだった。

「今回俺達のテーマは『トイ・ドール』っていう、二人の男に愛される美しい操り人形の話が基盤になってるんだ。イメージにぴったりだったから、宇咲くんにはその人形役をやってもらいたいの。だから動かなくて平気だよ」
 二人の男に愛される人形……なるほど、役が足りないから偉音は人形になれる素材を探していたという訳か。
「基本的には椅子に座っててくれればいいよ。俺達だって鬼じゃないから、素人の子に初ステージでいきなりあれこれ注文つけないよ」
「そ、そうですか。何か急にホッとしました……それなら俺にもできるかも」
 俺は二人のショーの「小道具」だ。物言わぬ人形、動かざる人形。
 最前列の客よりも一番近い場所から二人のショーを見ることができる、ちょっと得した気分になれる人形だ。

「動かなくても構わねえけど、最低限の決まりだけは覚えておいてくれ」
 偉音が真剣な顔を俺に向けて言った。
「まずお前は、人形であることを自覚しろ。最初から最後まで成り切れ、絶対に途中で我に返るな」
 慌ててスマホを取り出し、偉音の言葉をメモに入力する。
「な、り、きる……絶対!」
「それから、何があっても俺とネオンのパフォーマンスにビビるな。予め言っておくが、今回はかなり過激なこともやる」
「っ、……」
 心臓が跳ね、俺は手元のスマホから偉音へと視線を移動させた。