偉音との再会、ネオンとは初対面 -3-

 それから本当にしばらく歩かされて、初夏の陽射しに弱音を吐きそうになったその時、
「着いたよ、あの店」
 ネオンが一軒の服屋を指して言った。

 表から見た感じは……真っ黒の店。そう表現するのが一番合っていた。壁も看板も黒くて、狭い入口の奥は更に真っ黒だ。暗いのではなく、黒い。

 変な店なのかと思って怖気付く俺の背中をネオンが押し、恐る恐る中へ入ってみる。店内に客はいなかった。見る限り店員の姿もない。聞いたこともないような低いロック調のBGMだけがこの店の中で息吹いているようだ。

「わ、……」
 しかし中に入って納得した。どうやらレザー系を主としたステージ衣装を扱う店らしく、狭い店内には様々な衣装や小道具が並んでいる。

 偉音があの日穿いていたようなレザーパンツ、胸元がガッツリ空いたベスト、ジャケット、コート。ブーツ、帽子。スタッズ付きの派手な物もあれば、普通に外出用として着られそうな物もある。

 また女性用の衣装も多くあり、奥ではいわゆる女王様系の際どいセットを着たマネキンが飾られていた。

 こんな店に入ったのは初めてだ。思わずキョロキョロしてしまう俺の横で、偉音とネオンは何やら話しながら衣装を見ている。
 そういえば俺もこういうのを着ることになるのだろうか。

 首輪に鎖、鞭、手錠──。怪しげな雰囲気を出しながら並ぶ小道具に滑らせていた視線が「ある物」を捉えた瞬間、俺の心臓が跳ね上がった。

「………」
 固まる俺に気付いた偉音が、背後から俺の視線の先を覗き込む。

 何度も目にしてもはや見慣れている造形のそれは、間違いなく「大人の玩具」に分類されるモノだった。

「興味あるか」
 背後から、偉音に囁かれる。
「い、いや。ただいきなり目に入ってきたから、びっくりしちゃって……」

 恥ずかしくなってその場を離れ、俺は更に店内奥へと進んだのだが……奥は奥で大変なことになっていた。

 首輪や手錠が可愛く思えるほどの、恐らくはSMプレイで使われるのであろう小道具の宝庫。見たことのあるボールギャグやバラ鞭、乗馬用鞭。それから、名前も使い方も分からないナニか達。

「………」
 凄い世界もあったもんだ。半ば感心してそれらを眺めていると、黒い布に仕切られた向こうの部屋から店員らしき男が出てきて目が合った。

「お、いらっしゃい。珍しい感じのお客さんだね」
 口髭を生やした渋い感じの店員はやはりレザージャケットを着ていて、いかにもハーレーを乗り回している風の、だけど気さくなおじさんだった。

「ど、どうもです。すいません、何かジロジロ見ちゃって、……」
「構わないよ、ゆっくり見てって。ちなみにこれは開脚用の拘束具でね、それぞれの輪っかで太腿を固定して、間のベルトを首の後ろに持ってくると、もう二度と脚を閉じれなくなる仕様になってるんだ」
「はあぁ……なるほど」