偉音との再会、ネオンとは初対面

 月曜から火曜、週末を挟み、そして翌週の水曜。

 水曜は管理会社が休みだから、俺達不動産屋も大抵は休みだ。世間とはズレているけど、俺にとっての大事な休日。

 特に予定もないから、今日は観たかった映画を借りてきて、一日ゴロ寝して過ごそう。
 そう思っていたのに、家を出る直前になってスマホが鳴った。

 放置されているのかと思って半ば諦めていた──偉音からの連絡だ。

「えっやだ、どうしよう!」
 連絡を心待ちにしていたのにもかかわらず、いざこうしてかかってくると焦ってしまう。俺は震える指で通話ボタンを押し、小さく深呼吸してから端末を耳にあてた。

「もしもし……」
〈宇咲か。俺だ、分かるか?〉
「い、偉音、……」
〈正解〉
 紛れもなく偉音の声だ。心臓が跳ね、手に汗が滲む。

〈今日休みなんだろ。予定ないならちょっと出て来れるか〉
 そうだ、偉音には毎週水曜が休みだと言っておいたんだっけ。

「予定はないけど……」
〈じゃあ、駅まで迎えに行く。先に行って待っててくれ〉
 有無を言わさぬ偉音の低い声。こんな風に自然と誰かを誘えたら、友達も沢山できるだろうなと思った。

 ともあれ、ちゃんと連絡してくれた。それだけで嬉しくなり、駅へと向かう足取りも軽くなる。

 俺にとっては初めての、「会社」と「蓮司」以外の繋がりだ。新しい世界への扉だ。これから起きるかもしれないことにわくわくして期待と多少の不安とが混じり合い、変な笑いがこみ上げてくる。

 先に待ってろと言われたけれど、時間があるなら帰って着替えた方がいいだろうか。今日はパンツも普通だけど、先週新しく買ったやつに穿き替えて行った方がいいだろうか。

「……って、超期待してるし」
 俺はかぶりを振って歩き続けた。別に偉音とはそういう仲じゃない。先走って期待して、惨めな思いをするのだけはごめんだ。

 思いながらも頭のどこかで期待していたんだと思う。
 だから、待ち合わせ場所に現れたのが偉音一人だけじゃなかったことに対してほんの少しがっかりしてしまった。

「初めまして宇咲くん。ネオンです」
「は、初めまして。桐山宇咲です」

 肩までの柔らかそうな金髪には見覚えがあった。初めて偉音と会った夜、鳥籠の中で鎖に繋がれていた青年・ネオン──偉音の相方だ。

「ふうん、画像で見るより可愛い顔してるね」
「え? が、画像って……?」
「ネオン、余計なこと言うなよ」

 よく分からないまま偉音に背中を押され、駅前の道路に路駐していたバカでかい車の後部座席に乗せられた。運転席には偉音、助手席にネオン。これからどこへ行くのだろう。変なところで人見知りする俺は、この場に初めて会うネオンがいるというだけで上手く喋れなくなってしまう。