偉音という男 -7-

「んっ、……ふ、……」
 咥えて上下する俺の頭を上から偉音がゆっくり撫でる。髪を指に絡め、うなじを大きな手で揉まれ、それだけで高ぶってしまった俺は更に強く口の中のそれを吸い上げた。

「吸うんじゃねえよ、丁寧にしゃぶれ」
「ん、……?」

 分からないけど、とにかく言われた通りにしてみる。
 唾液を絡めてゆっくりと頭を上下させ、形を確かめるように舌で撫で、先端から溢れた体液を味わうように啄む。満足したのか、偉音が俺の髪をかき混ぜながら優しく撫でてくれた。

「もういいぞ。なかなか飲み込みが早いな」
「……ん、でもこれだと、イけなくないですか? ていうかイッてないし」
「射精が目的じゃねえからな」

 だったら他にどんな目的があるんだろう。思ったけれど、そもそもこの男と自分は住む世界が違うのだと悟って気にしないようにした。やり方なんて人それぞれなのだ。

「お前、ツレと来てるんだろ。はぐれたのか?」
「分かんないです。遊び人なんで、今頃ナンパした子と楽しんでるのかも」

 その時、まるで会話を聞いていたかのようなタイミングでポケットの中のスマホが震えた。見ればやはり蓮司だ。『ごめん、逆ナンされた! 宇咲どこにいる? 三人で一緒に遊ぶ?』
「………」

 不安なら傍にいるからと言っていたのに、これだ。まあもともと信用してなかったけれど。

「フラれました」
「いいんじゃねえの、個人で楽しむのも」
 俺も人のこと言えないな……思ったその時、照明が元に戻り音楽が変わった。ハッとして偉音のズボンに目を向けたが、さっきまで俺が愛撫していたそれは既にしまわれている。

「俺達も抜けるか」
「えっ? で、でも偉音さん、仕事中なんじゃ……」
「今日の仕事は終わり。後はフリーだ」

 心臓が高鳴る。何も期待していなかったのに、まさかこんな出会いがあるなんて。

「まだ時間も早いし、飯でも食いに行かねえか」
 相手が相手だから、それこそ一晩の関係になるかもしれないけれど別に構わない。
「……飯だけですか?」
「お前がいいなら抱くけど」

 俺は「取り敢えず」の毎日に、ちょっとした刺激が欲しかっただけだ。

「素っ気ない言い方だなあ」
「遠回しな表現は苦手だ」

 これがきっかけで、つまらない日常に何か心の変化があれば。
 そんな軽い気持ちで、俺は立ち上がった偉音の後について行った。