友達の作り方 -5-

「笑ってないよ。俺も彼女いないし、同じ同じ」
「一般の女なんて煩わしいだけですよ」
 携帯と湯呑みを置いて将造に向き合い、何とは無しに訊いてみる。
「将造、休みの日は何してんの?」
「俺は忙しいです。前日の夜から一泊で旅行したり、仲間と会合を開いたり」
「え、どういうこと?」

 てっきり俺と同じように孤独で自堕落な週末を過ごしているのかと思いきや、将造の答えは見事に俺の期待を裏切るものだった。

「地方アイドルの追っかけをしてるんです。仲間達と遠征したり、ライブや握手会に行ったり。本当は平日も作戦会議なんかで忙しいんですが、お金がないと彼女達に会いに行けませんからね。仕方なく、勤務時間の融通が利くこの会社にバイトの応募をしたんです」

 突然饒舌になった将造に、俺はただただ唖然とするばかりだ。
 アイドルオタクって本当にいるんだ。メディアがでっちあげた嘘だと思っていた。

「楽しいの、それ?」
「生きてるって感じがします。俺が唯一熱中できることですから」
 そう言った将造の顔は、悔しいけれど輝いていた。彼には熱中できるものがあるのだ。他の全てを疎かにしてもいいと思えるほどに、今この瞬間を全力で楽しんでいる。……同じ志を持った仲間達と。

 俺なんかよりも、よっぽど「生きている」。

「楽しんでるんだな。楽しそうで何より」
「良かったら宇咲さんもどうです? 世界観変わりますよ」
「俺は、アイドルはちょっと……」
 鮭を容器の端に寄せながら俺を上目に見つめる将造の目に、何だか物凄く馬鹿にされている気分になった。その目に触発されるようにして、テーブルに置いたスマホへと手を伸ばす。

「………」
 つまらない日常、つまらない人生。一歩でもそこから踏み出せば、俺は「取り敢えず」から逃れられるだろうか。

『蓮司。今週末、付き合うよ』