友達の作り方 -4-

「どうしたの、新人くん、飯買ってきてないのか」
 一服休憩に向かう途中の田中さんが休憩室前の俺達に気付き、声をかけてくれた。
「良かったら僕の買ってきた弁当、あげるよ」
「え、でも田中さんの飯は」
「僕はほら、上司からお誘いがかかったから。昼は蕎麦でも食いに行くよ。弁当が無断になるかもって思って困ってたところなんだ」

 田中さんからコンビニの袋を受け取った将造が、小さく顎を前に突き出す。どうやら礼をしているらしかった。
「あのさ、ちゃんと声に出してありがとうって言った方がいいよ」
 休憩室で茶を淹れながら言うと、将造が「俺、あんまり魚好きじゃないんです」と鮭の乗った弁当を見て呟いた。

 思わず、心の中で「ああ」と溜息が漏れる。どうやら彼は、社会人としての根本的な部分が欠如しているタイプの男らしい。まるで精神は中学生のまま大きくなってしまった子供のようだ。初出勤だから大目に見るべきかと思う反面、あまり関わり合いになりたくないとも思ってしまう。

「………」
 無言で食事をとっていると、片手で操作していたスマホがふいに短く震えた。蓮司からのメールだ。

『先週は来なくて正解。曲も男もハズレばっかで全然楽しくなかったよ』

 消沈している蓮司の姿が目に浮かび、思わず笑みが零れる。

『よく一人でクラブなんか行けるよ。まあでも、ハズレの日だってあるだろ』
『宇咲、今週の予定は? また映画とお菓子か?』
『まだ未定。でもクラブには行かないから』
『たまにはいいじゃんかよ。不安なら俺がずっとそばにいるからさ』
 不覚にもその気障な言い回しにドキッとして、俺はそそくさと片手で湯呑みを引き寄せた。

 俺と蓮司が恋人として上手くいかなかったことの理由はいくつもある。大学が違って頻繁に会わなくなったこと、家が遠かったこと、蓮司がしょっちゅう携帯を止められて連絡がつかない時が多かったこと。慣れ合いすぎて恋人として見られなかったこと。

 だけどきっと一番の理由は、互いに独占欲がなかったことだ。俺は蓮司が誰と遊んでいても気にしなかったし、蓮司も俺のバイト先や大学での交友関係を深く詮索することはなかった。男同士、細かいことを気にするのは格好悪いと思っていたのかもしれない。

 繋がっていたのは体だけ。心は常に探り探りで、それか放置状態で、付き合っていることの必要性が感じられなかったのだ。

 蓮司とオープンな会話ができることを有難いと思う反面、ずっと友達として付き合っていたかったという思いもある。もしそうだったら、こんなセンチな気分にはならなかっただろう。

「嬉しそうですね。メール、彼女からですか?」
 唐突に将造が言い、俺は驚いて湯呑みを落としかけた。
「ち、違う。ただの友達。……将造は彼女いるの?」
「いません」
 だろうな、と思わず唇の端を緩める。するとめざとくそれに気付いた将造が「今、笑いましたね」と不満げな低い声で言った。