第6話 -2-

 このクラブで禁止されているのは性行為、暴力、違法薬の売買。特に皇牙は薬にかなり目を光らせていた。
 それ以外なら何でも──全裸ストリップでさえ、皇牙の許可さえ貰えばここではやっても良いということだ。実際に二人組のダンサーなどは、パフォーマンスの一貫で相手役のパンツに手を入れペニスを握ることもある。

 絡み合うだけの疑似セックスも、鞭で尻を叩くのも、ここでは様式美となるのだ。この世界の法律がどうなっているのかは知らないが、とにかくどんなにエロいストリップをしても誰も咎める者はいない。

 二人組が鼻を押さえて階段を上がって行くのを手を振って見送り、それからまたしばらく踊っていると、今度は別の男が離れた場所から俺を見ているのに気付いた。
 スーツ姿で髪も整っていて、若く、綺麗な顔をした男だった。
「………」
 皇牙と同い年くらいだろうか。その薄笑みは少し冷たい印象だが、顔立ちが整っているからか不快さは感じない。彼は水槽の中の俺に目を向けたまま壁際に立って腕を組んでいた。一人だろうか。パートナーも付き人もいない様子で、ただじっと俺を見つめている。

 見られてなんぼのストリップだ。俺は彼の方に体を向けて内側からガラスに手を付き、くねらせた上半身をガラスに擦り付けてアピールした。
 スーツの男がゆっくりと俺に近付いてくる。どうやら脈ありだ。売春は禁止だけど、仕事振りに対する客からのチップを貰うのは許されている。後で水槽を出た後に会ったら、酒くらい奢ってもらえるだろうか。

「新聞を見て来たんだ、チェーン・ストリッパー」
 男が俺を見上げて言った。皇牙とはまた違う、低くて冷たい声だった。
「想像以上に美しいな」
 口元だけでニコリと笑う。仕事中、客と会話してはいけないと皇牙に言われたからだ。
「そこから出たら、一度俺の相手をして欲しい」
「………」
 出会った相手とホテルに行くのは可能。確か初日に皇牙が言っていたっけ。
だけど、ここで承諾したら二度も三度も一緒という気になってタガが外れるのは嫌だった。

 誰とでも寝る男というのはもう嫌なんだ。どうせ体を使うなら、俺はセックスよりもストリップで人を魅了したい。

「フラれたか」
 俺の反応が無いのを拒否の証と取った男が、小さく笑って肩を竦めた。