第7話 風雅の心 -4-

「そういえば今日は、珍しく風雅が張見世に出ていたな」
「……ご覧になりました? 風雅兄さんが出てもすぐにお客さんが揚がるから、張見世に出ている兄さんというのは滅多に見られないものですよ」

 売れっ子でも馴染みの客が来ない日は皆と同じだ。張見世に出て格子越しに男達から吟味され、選ばれるのをじっと待つ。客がつかなければ売り上げはゼロだ。選ばれても選ばれなくても、辛い。

 呉服屋の主人が、裸のままの俺の背中を指で撫でながら言った。
「身なりの良くない若い男が、物欲しそうに風雅を見ていた。金がなくても見るだけはタダだ、客に呼ばれるまでずうっと立ち尽くして、風雅に見惚れていたぞ」
「………」
 昼間柳来さんの店にいきなり現れた、風雅さんの幼馴染。きっと彼だと思った。

「……風雅兄さんは、寿輪楼きっての人気男遊ですから。見惚れる方も多いかと」
「風雅を揚げるには並みの男の稼ぎじゃとても、とても。そういう男達は何か月も給料を貯めて、まとまった金を作って初めて、ようやく風雅に会いに行けるのさ」
「………」
「彰星もそういう男遊になれる素質はある。頑張ってのし上がって、そうしたらまた会いにくるよ」
「……お願いしますね」

 呉服屋の主人を見送った後で、俺は楼内を歩いていた番頭さんを捕まえて聞いてみた。
「風雅さんは? どなたか揚がりました?」
「ああ、中島の旦那が。一本じゃないが三時間も使ってくれたから良しとしてる。風雅をじいっと見てた若い男がいたが、予算を聞いたら逃げちまってよ。まあ、そんなのも珍しくない話だがな」

 玄関から二階を見上げれば、雷童さんや一郎太さん、銀月さんがそれぞれの客と部屋に向かって歩いているのが見える。皆楽しそうに笑っているけど、果たして心から笑っているかは分からない。

「そら、彰星。次の客を待たせてるから早く行ってくれ」
「はあぁ」
「溜息ついてねえでさ、笑って笑って」