第5話 少年たち -5-

「雷童兄さんの顔を潰すことになるから、僕、兄さんには言えなくて……。さっきなんか、僕、寝間に連れて行かれそうになって……」
「こんなの、泣くほどのことじゃないっ。俺達だって数年経ったらお客さんと寝間に行くことになるんだっ」
「す、鈴鞠はちょっと静かにしてて。……春和歌。お義父さんには言った?」

 大きな目にたんぽぽ色の髪。まるで雷童さんをそのまま少年にしたような姿の春和歌は、握った小さな両手を口元にあててかぶりを振っている。

「お義父さんに言えばすぐに解決してくれるよ。男遊以外の、しかもお付きの子に手を出すなんてここじゃ許されないことなんだから」
「駄目です。そしたらお義父さんが、雷童兄さんを叱ります……。僕の身に起きたことは全部、雷童兄さんの責任にされてしまうんですから……」
 それで八方塞がりになり、鈴鞠に相談していたのか。
「春和歌は単純な性格だから、お客さんにからかわれてるんですっ。そういうのを上手くあしらえるようにならないと、一人前の男遊にはなれませんっ」
 ぷんぷんと頬を膨らませる鈴鞠。俺は困ったように笑って彼の頭を撫で、そのうりざね顔を覗き込みながら言った。

「さすが風雅さん付きらしいね、鈴鞠は。でもさ、どうしたら良いか分からない時に怖くなっちゃうのは皆同じじゃない? 同じお付き仲間なんだから、鈴鞠だって春和歌が泣いているのを見たくないだろ? 春和歌のこと好きでしょ?」
「そっ、そりゃあ……春和歌と淡雪と俺は、前の娼楼でも一緒でしたから……」
「それなら一緒に解決してあげなきゃ。……雷童さんのお客さんも、今夜は一旦途切れたみたいだね。明日の見世開きまでに何か考えておくから、今夜は二人ともそれぞれの兄さんの所に行った方がいい」

「彰星さん……」
 縋るような目で俺を見つめる春和歌。
 俺はその宝石のように大きな目をじっと見つめ返し、頷いた。