第5話 少年たち -4-

「花見の席で舞い落ちてきた桜のようだ、彰星。この乳も」
 俺達は体を売る商売。男に抱かれるのが、俺達が生きるためにしなくてはならないこと。
「この小さな陰茎も、この蕾も……」
 薄明かりの点いたこの部屋で、厚い綿の布団の上で、俺は一夜の夢を殿方達に見せなくてはならないんだ。

「あっ、……あ、大川様っ……そこはぁ、あっ……ん」
「彰星さん、お布団を取り替えます」
「ぎゃっ、あ、淡雪──!」
 四つん這いになって大川さんに尻を舐められている真っ最中に、スッと開いた襖から膝をついた淡雪が現れた。

「も、もう一時間経った……?」
「はい。お布団を取り替えます」
「大川様、お時間です。また次の時に続きをお願いします……」
「む。少し飲み過ぎたか……」
「またお会いできる日をお待ちしておりますから……」
「彰星……」
「彰星さん、お布団を取り替えます」
「わ、分かったってば!」

 時間を決めて客を取る時は、きっちりその時間になればこうして淡雪が布団を替えにやって来る。客もそれを知っているから突然のお付きの乱入に怒ることはしない。

「……そうだけどさぁ、淡雪。もう少しやり方があるだろ。襖を開けずに声をかけるとか」
「そうしなければ図々しいお客さんは、一分でも一秒でも長く彰星さんを抱こうとしますから。彰星さんを待っているお客さんはまだいるんですよ」

 全てはお義父さんの教えだから、淡雪も従わなければならないのは分かっている。だけどまだ十二歳の淡雪にあんな姿を見せるというのは、気が進まなかった。そんなの娼楼では気にすることでもないはずだけど、どうしても俺は雷童さんと田崎の大旦那様がしていた「あれ」を見た時の気持ちを思い出してしまうのだ。

 自分だけ場違いで恥ずかしくて、見てはいけない物を見てしまっているという、後ろめたいあの気持ち。淡雪は淡々と用を告げに来るけれど、心の中では大人達のどろついた行為をどう思っているのだろう。

「……はあ」
 六時から立て続けに三人の客を取り、ふらつきながら廊下を歩いていると。
「春和歌のばかっ、ばかっ! これしきで泣いてたらお付きなんか務まらないだろっ!」
 雷童さんの部屋からそんな声が聞こえてきて、俺はそっと襖を開けてみた。中にいたのは春和歌と鈴鞠の二人だ。何かで遊んでいたのか、畳の上には細々とした木の人形が散らばっている。

「ど、どうしたの? 何かあった?」
 思わず声をかけると、元々つり上がった目を更に細くさせた鈴鞠が呆れたような口調で俺に言った。
「彰星兄さんっ。春和歌ったら、雷童兄さんのお付きを辞めたいなんて言うんですっ」
「へっ? な、何で……。雷童さん優しいだろ。多分寿輪楼で一番優しい兄さんだよ?」

 慌てて春和歌の傍に駆け寄り、背中を撫でながら理由を訊くと、
「違うんです。雷童兄さんのことは僕も大好きなんですが……兄さんのお客さんが、兄さんがいない間に僕の体を触ってきて……」
「え」
 ……とんでもない答えが返ってきた。