第5話 少年たち

 そういう訳で、俺の初見世から数日後。
 まさかの一ノ瀬堂の若様が彰星の旦那になったということで、寿輪楼では色々なことが動いていた。

 まず俺にも部屋が与えられた。これを機に風雅さんと雷童さんもそれぞれ一人部屋になり、俺達三人は仲良く並んで一階の西奥に一人ずつ部屋を貰うこととなったのだ。

 それから、俺のお付きとして十二歳の可愛い男の子が来てくれた。
「名前は淡雪あわゆきと申します! 彰星兄さん、今日からよろしくお願いします!」
「うん、ありがとう。こちらこそよろしくね!」
 儚げな名前とは裏腹に元気一杯の淡雪は、俺が教えることなんて何もないのではと思うほど仕事のできる子だった。恐らくまだまだ初心者の俺だから、敢えてしっかり者を付けてくれたのだろう。

 雷童さんのお付きは春和歌はるわか
 風雅さんのお付きは鈴鞠すずまり
 淡雪も含め、三人とも器量良しで仔犬みたいな愛らしさがあった。

「彰星さん、髪が乱れてます。直しますから座って下さい」
「いいよ淡雪。見世開きまでまだ時間あるし、ちょっと昼寝するから淡雪も休んで──」
「駄目ですっ、寿輪楼の兄さんが髪の乱れたままだなんて! さあ座って下さい!」
 ……しっかりし過ぎてる気もするけれど。

 俺が異例だっただけで、基本的に男遊のお付きは十歳前後の小さい子がなるものらしい。売られた子達の中でも男遊として将来有望な子だけが、お付きの仕事に就けるのだ。

 男遊が客を迎える前の身支度はもちろん、日常から着替えの手伝いやマッサージやその他言われたことは何でも従わなければならない。
 男遊が客と交わっている最中も、用事があれば寝間に入って仕事をしなければならない。大人の男同士の情交を目にすることに一切の配慮などなく、そうしてお付きは男遊としてのあれこれを学んで行くのだ。

 寿輪楼のような大きな娼楼ではこんな感じだが、実際はお付きをつける余裕のない娼楼の方が多い。だからか、お付きの少年達は皆自分の仕事に誇りを持っているらしかった。

「雷童さんっ。新しい香油を頂いてきました!」
「わ、ありがとう春和歌~。いま丁度頼もうと思ってたんだ。良い子だねえ」
「へへ……。僕、前の黄花楼おうかろうにいた時から雷童さんの噂を聞いてて……お義父さんに引き抜いてもらって、寿輪楼で雷童さんのお付きになれて幸せなんです!」
「もうっ、可愛いなぁ!」

 雷童さんと春和歌は上手くやっているようだ。というかこの二人、物凄く似ている。ほんわかしているところも、屈託なく甘えるところも。流石はお義父さん、雷童さんにはこの子が合うと踏んでお付きにしたのだろう。