第2話 娼楼の外で -9-

「あっ、あん……。気持ち良いです、旦那様……ずっと欲しかった……!」
「雷童。……雷童っ……」
 仰向けに開いた股の間に大旦那が腰を打ち付ける。それから雷童さんが四つん這いになり、後ろから大旦那が腰を打ち付ける。更に体を横にし片脚を上げた雷童さんの股の間に、大旦那が腰を打ち付ける……。

 何度も何度も、永遠にこの時間が続くのではと思うほど、何度も。不思議なことに雷童さんの声を聞いていると、俺自身も熱くなってくる。昨日風雅さんの足で押された部分が、触ってもいないのにむずむずと熱を持ち始めていた。

 体のあちこちを触られるのも、足の指ではなく手のひらでそれを包まれるのも、乳首を吸われるのも、雷童さんはとても気持ち良さそうだ。大旦那が何かする度に声を弾けさせ、俺の股間を更に熱くさせる。この高ぶりの終わりはいつ訪れるのか──それはこの場を支配している大旦那にしか分からない。

「あぁっ……あ、もう……俺、は……ぁっ」
「出しても良いぞ、雷童……」
「だ、旦那様……あぁっ!」
 昨日の俺と同じように雷童さんが果て、ぐったりと布団の上に身を伏せた。数舜遅れて今度は大旦那が、陰茎に着けた膜越しに雷童さんの中へと気を放つ。

「はぁ、は、……だ……旦那様……」
「雷童。必ずまた来る。次の仕事が終わったら、しばらくはこっちに居られるから……。それまでこの私を忘れないでいてくれ」
「忘れません。旦那様……ひと時だって、俺は貴方を忘れたことはありません……」
 潤んだ目で雷童さんが大旦那を見つめ、二人は遠い約束を誓い合うように口付けを交わした。

「………」
 未だ股間を熱くさせた俺だけが置いてけぼりにされていたが、二人を前に何も言えずただ我慢するしかなかった。

「ふ、ふ、ふふ、風雅さぁん!」
「何だ彰星。何を泣いてんだ」
「お、俺のあそこ、昨日みたく足で押して下さいっ……お願いします、もう爆発しそうなくらい痛いんですっ」
 田崎の大旦那を見送った後、俺は風呂へ向かう雷童さんの目を盗んで部屋の片付けもせずに風雅さんの元へ走って来たのだった。

「何だぁてめえ、藪から棒に変態的なこと言いやがって……!」
 風雅さんも客を取った直後らしく疲れた顔をしている。裸になった上半身をうちわで扇ぐその姿が今の俺には刺激的過ぎて、危うく鼻血が出るかと思った。

「おお大旦那様と、ら雷童さんが、おお俺の目のまえできゅうに……」
「落ち着け、彰星。あの二人のことだから大体察しはついたが……言っておくが俺の足は高けえぞ。昨日は初回無料でしてやったけど、本来なら銭が必要なんだ、分かるか」
「お金、持ってません……」
「なら諦めろ。自分でデキないことでもねえし、便所で抜いてくりゃいいだろ」

 俺は唇を噛んで、持っていた袋を畳に滑らせた。
「何だそれ?」
「数量限定の『弥代てまり』です。大旦那様がお土産にと、飴屋のご主人の店で買って下さいました」
「よし、引き受けよう」
「うう……俺の飴……」

 こうして沢山の飴を独り占めできると思っていた俺の野望は、意味不明な股間の熱のせいで水泡に帰したのだった。

 俺もいつかは客を取ることになる。
 その時俺は、雷童さんが言っていたような台詞を言うことになるのだろうか。
 ──忘れません。俺はひと時だって……
 好きな男への気持ちを抑えられず、涙を流すことになるんだろうか。

 第2話・終