第16話 ご主人への贈りもの

 平日、木曜日。

「贈り物かぁ……難しいなぁ」
「え、そんな難しいこと?」
 今日は大三元町の駅近くにあるカフェで、華深と向かい合いお茶をしている。華深と一緒ということと家から近いということで、珍しく俺一人での外出を許してもらったのだ。
 ──炎珠さんと刹に、日頃の感謝を込めた贈り物がしたい。
 そんな想いをぽろっと口にしたら、意外にも華深が宙を見つめて考え込んでしまった。

「男って、ファッションでも何でもこだわりがあるじゃん。ブランド物のネクタイをあげたとしてもデザインが好きじゃないとか、色がちょっととか、細かいしさ。もちろん表面上は喜ぶけど。男へのプレゼントって、何か幅が狭いよね」
 確かに女性への贈り物だったら、花とか指輪とか、ティーセットとか、パッと考えても色々思い浮かぶけれど。

 炎珠さんは「可愛い物」と考えればまだ分かりやすいけれど、問題は刹だ。刹が好きなのは黒い物というだけで、具体的に何が好きなのかは未だによく分からない。

「刹っちゃんの趣味は写真ってことくらいしか分かんないもんなぁ。その他に何か興味持ってそうなことって……一緒に住んでる那由太の方が詳しいんじゃないの?」
「写真以外っていったら、後はもう……寝ることくらいしか」
「何だそれ」
 ガクンと項垂れる華深に苦笑しつつ、俺は逆に訊いてみた。
「幸嶋さんにプレゼントするとしたら、何あげる?」
「うーん。栄治さんが好む物って、俺には高くて買えないからさぁ。……だから、うーん……俺の場合はどうしても、エッチな方向にいっちゃうかもしれない。普段は恥ずかしくてできないこともさせてあげるとかね」
 ──俺にとっての師匠である「華深先生」が恥ずかしくてできないことって、何だろう。

 顔に出ていたらしく、「聞きたい?」と言われてしまった。
「俺はイチャイチャするのが好きだから、普段は縛りとか凌辱とかやらないんだよ。でも栄治さんはそういうのちょっと好きで、たまにはやりたいらしくて。だからそういう記念日とかプレゼントとして、外とマジックミラー一枚隔てた部屋でセックスとか、ちょっとSMっぽいのとかやってる」
「………」
 アイスカフェオレのストローを咥えたまま、俺の顔は真っ赤になっていたと思う。

「結局ご主人的には、可愛いペットの姿を愛でたいっていうのが一番だから。もちろん形の残るプレゼントも大事だし喜んでくれるけど、形に見えない愛情ってのも凄く喜ばれると思うよ」

 形に見えないもの。俺が大事にしたい「思いやり」。
 多分それは、エッチなことに限った話じゃないはずだ。

「思いつかなければ、ご主人に任せていいしね。今日はリクエスト何でも応えるよ~って言うと、栄治さんめちゃくちゃテンション上がるもん」
「なるほどなぁ……」
 難しいし今の時点では何も思い浮かばないけれど、だからこその俺の気持ちだ。簡単に用意できる物じゃなく、じっくり考えたものを二人にプレゼントしたい。