第14話 ご主人との大切な思い出 -2-

 それから幸次郎さん達にビニールのサメを使ってもらって、五人でシュノーケルをしながら三時頃までたっぷり遊んだ。

 周りにいたファミリーの子供達もそろそろ眠そうだ。俺達は温かいシャワーで潮と砂を落としてから、ホテルへ向かうことにした。
「海から上がって服着た時って、めちゃくちゃ暖かくて天国ですよね、涼真さん」
「すぐ暑くなるけどな」
「わ、涼真。お前結構日焼けしてるなぁ。もっとオイル塗ってやれば良かった」
「たまには焼くのも良いだろ。よりカラスっぽくなるんじゃないか」
 涼真さんもご主人と海を堪能できたようで何より。幸次郎さんとの夜の話は置いといて、何だかんだやっぱりお互い好き合っているのが分かる。

「それじゃあ夕食の時間まではフリーだね。六時半頃になったらリビングに集合して、ホテルのご飯を食べに行こう」
「涼真、少し昼寝しようぜ。疲れただろ」
「ああ、そうだな……」
 幸次郎さんと涼真さんが寝室に入って行くのを見届けてから、俺はまた手元のタブレットに視線を落とした。
 さっき刹が撮ってくれた写真がたくさん保存されている。防水のデジカメで撮った水中写真もWi-Fi経由で簡単にタブレットに転送できるというのだから、全く便利で面白い時代だ。

「綺麗だったなぁ、海。魚が群れになって、全員同じタイミングでクルッと方向転換したり……不思議だなぁ」
「シュノーケルツアーでもっともっと沖の方で潜る時は、運が良ければウミガメに会えたりもするんだよ。ジンベエザメと泳ごうっていうツアーもあるしね。那由太がやりたかったら今度申し込んであげるよ」
 ジンベエザメは心から憧れるけれど、ビビリな俺の場合、実際目の前に彼らが現れたら恐怖でパニックになってしまいそうだ。それよりはまだ小さいウミガメと泳ぐツアーから挑戦した方が良いかもしれない。

「あ、刹が笑ってる。珍しい」
「どれどれ? あ、これ俺が刹のカメラで隠し撮りしたやつだ。タイトルは『ヤドカリを見つめる万年寝不足男』」
 大笑いしながら次々画像を見ていると、ふいに刹が缶ジュースを口元にあてた格好のままで静止し「おい」と声を潜めた。
「……どうしたの、刹?」
 炎珠さんが顔をあげた、まさにその時……
「………、……、……」
 隣の寝室から微かに、幸次郎さんと涼真さんの声が聞こえてきたのだ。