第13話 海に行こうよ、ご主人! -3-

 そうして翌日はシュノーケリングマスクや俺の水着を買いに行き、目をハートにさせた炎珠さんにピンクのふりふりビキニ(女性用)を買われそうになったり、ビニールの巨大シャチとサメのどちらを買うかで刹が一時間以上悩んだり、冷たいクレープアイスを食べて満足したり、また三人で風呂に入ってのぼせそうになったりと……

 そんな慌ただしい時間と日々を経て、今日――ようやく旅行当日を迎えたのだった。
「えっと、まずは幸次郎の家に寄って、二人を拾ってから目的地を目指すって感じだね。長距離になるから、刹、疲れたら運転交代するよ」

 行き先はK県M市。海が凄く綺麗で有名な場所だ。
「みんなで旅行って、すっごい楽しみです!」
「那由太、変わったよね。初めの頃は幸嶋さん達に会うのすら嫌そうにしてたのに」
「あはは。思っていたよりずっとみんなが良い人だったので……」
 初めの頃は確かに、炎珠さんと刹のこともただの変人だと思っていた。PdMCだって変な人達の集まりにしか思えなかったし、俺は借金の肩代わりを条件に二人の性的なオモチャになるんだと思っていた。

 だけど待っていたのは、優しくて幸せで笑いに溢れた毎日。刹の寝起きの悪さや炎珠さんの「可愛いもの攻撃」にはげっそりすることもあるけれど、それを踏まえた上で楽しいことの方がずっと多い。

「全部二人のお陰です。ありがとうございます」
「畏まってやがる」
 運転席で刹が笑って、炎珠さんもつられて笑う。
 俺も恥ずかしくなってしまったけれど、きっと華深や他のペット達も、多かれ少なかれ俺と同じような気持ちを持っていると思う。
 だから今日これから初めて会う涼真さんも、きっと――

「幸次郎、涼真! 家の外で待っててくれたんだ、暑いのに悪いね」
「車を出してもらうというのに、出迎えずにいるのは人としてありえないからな……今日は感謝するぞ、刹に炎珠」
 そう言ったのは黒髪カラスの涼真さん。幸次郎さんはその後ろで荷物を担ぎながら困ったように笑っている。

「君が炎珠と刹のペット、那由太か。今日から二泊三日よろしく頼む。俺は涼真、こっちの男が俺の主人、幸次郎だ」
「は、はい! 那由太です、こちらこそよろしくお願いします!」
 流石に幼馴染だからか、主人とペットの関係で揉めたからか……何だか涼真さんの方がしっかりしていて、まるで幸次郎さんのご主人みたいだ。
「幸次郎、荷物こっち乗せてね。後ろ、三人で乗れるかな」
 トランクに幸次郎さん達の荷物を乗せて、後部席に俺、涼真さん、幸次郎さんの順番で座る。

「はー、車ん中涼しいぜ。刹っちゃん、今日は車ありがとうなぁ!」
「……それよりも幸次郎。お前は彼らに挨拶したのか」
「あ、悪い悪い。炎珠に刹、そんで那由太。今日から旅行、楽しもうぜ!」
「………」
 頭を抱えて溜息をつく涼真さん。「幸次郎は相変わらず元気だね~!」と炎珠さんが笑っている。

 さてはこの二人、かなりのでこぼこカップルと見た。