第11話 夏祭りは危険がいっぱい? -2-

 刹の車で連れて行かれたのは、お洒落な外観の建物だった。
「ここは……」
 立て看板には「タトゥースタジオ ロックスター」とある。
「タ、タトゥー?」
 驚いた俺の腕を引いて、刹が平然とスタジオの中に入って行く。

 狭いスタジオ内は二組のソファが向かい合わせに置かれている接客スペースがあり、その奥には歯医者さんの治療台みたいな施術台がある。
 施術台には今まさに右腕にタトゥーを入れている男性が座っていて、その近くに機械の針──やっぱり歯医者さんのドリルみたいだ──を操作しているスキンヘッドの男の人がいた。

「ナガさん」
「いらっしゃい。……おお、何だ、刹か。もうちょい待っててな」
 ナガさんと呼ばれたスキンヘッドの人が刹を知っていることに面食らっていると、右腕を出していた男性が「あざっした!」と大声を出した。
「今日は風呂で濡らしたりするなよ。痒みが出てきたら市販の傷薬を使え」
「あざっしたナガさん! うお、かっけぇ!」
 入れたてホヤホヤのタトゥーに興味をそそられ、少しだけ首を伸ばして覗いてみる。
 手首から肘まで施されたタトゥー。それは三つのダイスを操る女神のようなデザインだった。
「わ、すごい……」
 男性がナガさんに代金を支払い、意気揚々とスタジオを出て行く。

「待たせたな。で、どうした。とうとう墨入れる気になったか、刹」
「いや俺じゃねえす。コッチの那由太にお願いしたいんですけど」
「えっ? や、やだよそんないきなり言われても!」
 ナガさんが顎に手をあて、まじまじと俺の顔を見つめながら言った。
「うーん、美しい肌だ。よっしゃ任せな、俺の魂をかけた針さばきで君をより美しくしてやろう」
「嫌ですってばぁ! 針は怖いんです!」
「彫る訳じゃねえよ、安心しろ那由太」
「え……?」

 刹が冷静に言って俺の頭を撫でる。
「ナガさんは彫り師兼アーティストだ。お前も知ってる芸能人なんかにもドラマの役作りでタトゥーペイントをしている」
「ペ、ペイント……?」
「ハリウッドや洋楽の歌手からもオファーが来るほどの腕枕だぞ。お前の背中にペイントしてもらおうと思ってな」
 ……そういうことか。焦ったけれど、消える絵を描いてもらえるならちょっと興味があるかもしれない。

「そんなに褒めるな、刹。照れるぜ」
「ちなみにナガさんもPdMCメンバーだ。ペットは虎でしたっけ」
「そうなんですか! 俺、刹と炎珠さんちのネコです。那由太です!」
 PdMCメンバーと分かった途端、俺は何となくホッとしてしまった。同志──そんな気がするからだ。
「よろしくな、那由太。ナガさんこと松永だ」
「よろしくお願いします!」
 握手をしたナガさんの右手には、色々な塗料が付着していた。