第10話 ご主人の声には反応します、ネコです -6-

 そうしてドタバタの二日間が過ぎ、三日目の夕方──ようやく炎珠さんと刹が帰ってきた。
「那由太!」
「炎珠さん!」
 玄関先で熱い抱擁を交わし、炎珠さんから連続キス攻撃を受ける俺。
「おかえりなさい炎珠さん、刹!」
「ただいま那由太! 何も起こらなかった? 怪我とかしてない?」
「してませんよ! 幸嶋さんと華深がずっといてくれたので!」

 俺を片手で抱きしめたまま、炎珠さんがもう片方の手を伸ばして華深の頭をグリグリと撫で回した。
「ありがとうね華深。お土産買ってきたから持ってってね!」
「幸嶋さんもありがとうな。凄げえ助かった」
「水くせえよ刹坊、困った時は助け合いだろ」
 肩を叩き合う幸嶋さんと刹。
「良かったな那由太、無事に二人が戻って来て」
「はい!」
 まるでラストダンジョンに向かった勇者達の帰還を祝っているみたいだ。
 だけど俺の身に起きた不思議な運命のように、何が起こるか分からないのが人生というもの。多少大袈裟でも何でも、今は二人のご主人が帰って来てくれたことを喜びたい。
 それから、大切な仲間ができたことも。

「ありがとうございました幸嶋さん、華深! めちゃくちゃ楽しかったです!」
「俺も楽しかったよ、那由太ー。今度はご主人も一緒に皆で遊ぼうね!」
 ウサギとネコの友情を確かめ合っている横で、炎珠さんが言った。
「良かったら五人で飯でもどう? まだ食べてないよね?」
「そうしたいが、お前らを早いとこ三人きりにしてやりたいから俺らは帰るとするよ」
「栄治さんそう言って、早く俺と二人きりになりたいんじゃないの?」
「な、何を言う」
 華深に言われて一瞬ギクリと顔を引き攣らせた幸嶋さん。それだけが理由じゃないにしても、きっとそれも理由の一つなんだろうなと思ってほっこりしてしまう。

 二人にお土産を持たせて見送った後、俺は二人分の冷たいお茶をグラスに注いでリビングのテーブルに置いた。
「お家、どうでした? 里親さん達お元気そうでした?」
「うん、相変わらずって感じだったよ。何かよく分からないけど会社のパーティーみたいなのに出されて、後は俺達がいた施設にも行って挨拶してきたんだ」
「忙しかったんですね……刹はさっきから既に眠そうだし」
 いつもの目の下のクマがより濃くなっている刹は、こうして座っている今も油断すると寝落ちしそうなほどうとうとしている。

「シャワー浴びて軽くご飯食べて、今日はもうゆっくり休んで下さい」
「休みたい気持ちと、那由太と遊びたい気持ちと、半々ってところかなぁ」
「俺とはいつでも遊べますから、休みたい気持ちを優先して下さいよ炎珠さん」
「そうなんだけど、……休むのもいつでもできるしなぁ」
「………」