第10話 ご主人の声には反応します、ネコです -2-

 炎珠さんがシャワーを浴びている姿を思い浮かべて「ふふ」と笑っていると、刹が「今日は何したんだ?」と訊いてきた。
「今日はずっと雨だったから、家で三人おとなしくしてたよ」
 華深が幸嶋さんに対して同級口だったから、何だか俺もうつってしまったみたいだ。それでも刹は何も触れることなく相槌を打ち、俺の話を聞いてくれている。

〈あの二人とずっと一緒にいたんじゃ、色々あてられてるんじゃねえのか〉
「あはは、ちょっとだけ」
 スマホの向こうで刹も少しだけ笑った。
〈俺も早く帰りてえ。戻ったら三日分じっくり可愛がってやるからな〉
「それ、幸嶋さんも華深に言ってたような……」
〈目の前でセックスしてもらえば良かったんじゃねえの。お前の勉強にもなるかもしれねえし〉
「な、何言ってんだよ……!」
 刹の言葉に頬がぶわっと熱くなり、スマホを持つ手にも汗が滲んだ。俺の焦りは充分に伝わったらしく、刹は小さく笑っている。

〈那由太〉
 まるで、耳元でささやかれているみたいだ。

〈お前もそろそろ我慢してる頃なんじゃねえの〉
「……ん、……」
 見透かされている恥ずかしさよりも鼓膜に触れる刹の声が甘過ぎて、俺は唇を噛み、ソファに座ったまま膝をもじもじさせた。
〈一人でしてねえのか?〉
「し、してない。……昨日は華深と一緒に寝たし……」
 刹の声と微かに聞こえる息遣い。テレビ通話じゃないからこそ、何だかそれらを余計敏感に感じ取ってしまっているみたいだ。

 簡単にいえば今の俺は、刹の声だけで若干興奮しかけている。

〈早く那由太を抱きてえ〉
「………」
 その声で、そんな台詞を言うから。
 そんな台詞から、これまでのことを思い出してしまうから。

「……せ、つ……」
〈うん?〉
「俺も、二人に会いたい……。早く帰ってきて、刹。……俺のこと抱いて欲しい」
 顔を真っ赤にさせながら訴えると……しばしの沈黙の後で、刹が言った。
〈まだ幸嶋さん達戻って来ねえか〉
「えっ……? う、うん。まだ風呂場で騒いでるのが聞こえてくるけど」

 ………。

〈自分で触ってイくところ、このまま聞かせろよ〉
「えっ……!」