第9話 ウサギとネコのお泊まり会 -3-

「でも嬉しいな! 人んちに泊まるの初めてだし、旅行に来た気分」
 リビングのソファに勢い良く座った華深が、隣に俺を座らせながら手を握ってくる。
「那由太ともまた会いたいって思ってたし、栄治さんがいるなら安心だしね」
「うん、俺も華深に会いたかった。話したいこといっぱいあるよ」
 初めて華深と会った時に教えてもらった、ご主人とのアレコレ。あの時よりも少しは俺にも知識が付いたし、更にご主人を喜ばせられるようなことも華深から教えてもらえるかもしれない。

 まだまだ俺はペット初心者だ。炎珠さんと刹がいる場所ではできない話や相談も、今日から三日間は好きな時に華深に聞ける。

「だが、俺は炎珠のように料理ができないからな。三日間は外食かデリバリーになると思うが、我慢してくれ」
 俺達の正面のソファに座った幸嶋さんが照れ臭そうに言った。
「構いませんよ、俺は」
「済まんな。初日の晩飯は何がいい、那由太」
「お二人が食べたい物で大丈夫です。俺、好き嫌いありませんから」
 凄いねえ、と華深が俺を見る。

 本当なら俺がお客さんに手料理を振舞うべきだけれど、幸嶋さんほどではないにしろ料理の腕には自信がない。やっぱり料理担当の炎珠さんが作った物でないと、「しっかり食べた」心地がしないのだ。

「じゃあ俺、お寿司がいい! 特上!」
 遠慮なく手をあげて言った華深に、幸嶋さんが「まあ手軽に食えるから良いか」と同意した。
「五人前ほど頼めば、三人で食っても流石に足りるだろう。……那由太、この辺に有名な寿司屋はあるか?」
「ぜ、全然分かりません……」
 今まで洋風の食事が多かったから、寿司屋が近くにあるのかさえも分からない。

「近所にないなら、ちょっと遠くても出前取れる所探そうよ。俺もうお寿司のことしか考えられないから」
 華深って意外と我儘というか、遠慮がないんだなと思った瞬間だった。
「済まないな那由太。ウチのがこう言っているから付き合ってやってくれ」
「は、はい。構いません」
 そして幸嶋さんも意外と、炎珠さんと刹に負けず劣らず親バカらしい。PdMCのご主人達って、皆こんな感じなんだろうか。

「ご飯の後は俺と那由太でお風呂入る。それからアイス食べて、那由太の部屋で一緒に寝ようね」
 嬉しそうにはしゃいでいる華深。耳上辺りの髪をまとめているピンにはウサギのチャームが付いていて、今更だけど彼もペットなんだなと実感した。どうもこの二人は遠慮なく物を言い合ったりしているから、普通の恋人同士のように見えてしまうのだ。