第3話 初めてのお仕事? -4-

「これに着替えろ」
 一通り撮り終わったところで、刹が別の衣装をベッドに置いた。広げてみたそれは黒のタンクトップ、……だけ。

「下はこのまま?」
「下は今穿いてる下着のままでいい。帽子は被ってろよ」
「………」

 黒のタンクトップに黒のボクサーパンツか。裸じゃないだけましか。

「次はそこに座れ」
 ベッドの横にあった玉座のような椅子を指して刹が言った。玉座といっても勿論モノトーンで、何だかSMで使う椅子みたいに禍々しい。

 初めに膝を組んで座り、肘掛けに頬杖をつき、横に座って肘掛けに膝を乗せたり、片足を椅子に乗せたりと、全て炎珠の指示でポーズを取って行く。何度か無理な体勢を取らされて腰が痛くなったが、まだまだ終わる様子はなく思わず溜息が出た。

「よし、両脚を肘掛けに乗せて脚を開け」
「ええっ!」
「頑張って、那由太!」
「……もう!」
 刹の命令と炎珠さんの励ましを受けて、俺は半ば自棄気味に脚を開いた。

 ──これはビジネスだ。俺は金を貰って写真を撮られるだけだ。

「偉そうに踏ん反り返る感じでいいぞ」
「気だるげな感じでも良さそうだね」
 大きく股を開いた状態が恥ずかしくて、カメラのレンズを見ることができない。緊張をほぐすために小さく深呼吸を繰り返していると、刹がカメラを置いて俺の方へとやって来た。

「………」
「な、何……?」
 顎に手を置いた刹は何かを考え込んでいるようだ。鋭い目にじっと見つめられ、ますます緊張してしまう。
 七分袖の黒いシャツと、ブラックスピネルのブレスレット。刹のしなやかな白い腕が俺の方へと伸びてきて、タンクトップの裾を大きく捲られた。

「わっ、何すんですかっ!」
「少し色っぽいのも撮っておこうと思ってよ」
「そういうの要らないです! 普通のでいいから!」
「こうして裾を握って、自分で捲ってろ。ちゃんと乳首を見せておけよ」
「何で俺の言うこと全然聞いてくれないんだよぉ!」
 それが刹って男だから、と炎珠が傍らで苦笑している。

 借金のことはともかく、確か俺は何不自由ない暮らしを提供すると約束されたんじゃなかったっけ? ……それがどうして、こんなセクハラを受けなければならないんだろう。

「………」
 裾を握りしめたまま唇を噛んでいると、炎珠さんが人差し指を自分の頬にあててニコリと笑った。

「那由太、これが終わったら美味しいお昼ご飯にしよう。撮影頑張ったご褒美にデザートのリクエストを聞いてあげるけど、何がいい?」
「で、でもこんなの俺、恥ずかし──」
「炎珠がデザート作ってくれるってよ。何が食いたいか言えよ、にゃん太」
「……チョコアイスのクレープ」
「オッケー。それじゃ俺、支度してくるね!」

 炎珠さんが部屋を出て行って、俺は刹と二人きりになってしまった。