夏の思い出、作ります! -3-

 深夜零時。
 ナハトと瑠偉は酔い潰れて眠っている。俺もだいぶ飲んだがヘルムートを一人にして潰れる訳にもいかず、酒を飲むのと同じくらい水を飲んでいたお陰もあって意識ははっきりしていた。

「ヘル、まだ眠くないのか?」
 部屋の窓から外を眺めていたヘルムートが、俺の言葉に反応して振り返った。
「綺麗なお月様出てますから、見ないと勿体ないです」

 まださっきの光景が頭に残っている。月光と水飛沫を浴びて水面から飛び上がったヘルムートがこの世の何よりも美しかった、あの一瞬──。

「ヘル、少し外に出るか」
「はい!」
 別荘を出れば外には自然が広がっている。電線のない大きな夜空に澄んだ空気、緑を揺らす心地好い夏の夜風。
 俺はめいっぱい綺麗な空気を吸い込み、腹から思い切り二酸化炭素を吐き出した。

「とても良い所です!」
「ああ、地元の海原町とは全然違う。こんな場所に住んでみてえな」
「でもおれ、海原町も大好きです。衛さんのケーキ屋さんもあって、みんながいる水族館も近くにあって、千代晴のお家もあります」

 ヘルムートの手を握り、星空の彼方へと目を凝らす。
 見えないと分かっているが、この空の向こうのどこかにヘルムートの星があると思えば不思議と胸が躍った。俺達は繋がっている──ふと、そんな気持ちになる。

「俺もいつか、クーヘンの星に行ってみてえ」
「大歓迎です! おれも、千代晴にクーヘンの景色見せたいです!」
 薄い桃色の空。爽やかなソーダの海。咲き乱れるお菓子と、あちこちに実ったフルーツ。

 甘い香りに包まれた、どこまでも平和で美しい星。
 ヘルムートが生まれ、愛されて育った、優しい星。

「………」
「……千代晴?」
 気付けば俺は星空の下、ヘルムートを抱きしめていた。
「初めはヤバくて面倒な奴ってイメージしかなかったけど、お前の旦那になれることを誇りに思うよ、ヘルムート」
「あ……」