となりのナハトくん -6-

「よし、食うぞ!」
「食います!」
 テイクアウトのハンバーグセットを二つテーブルに置く。横を見ればヘルムートが真剣な顔でフォークを握り、俺がプレートの蓋を開けるのをじっと見つめていた。
「……開けた瞬間に飛びつくなよ?」
「分かってます。いただきます、してからですね!」
「おう、その通りだ!」

 ほかほかと湯気の立つハンバーグプレート。フライドポテトもソーセージもあるし、ビールも買った。エアコンも効いているし、言うことなしの夏の夜飯だ。
「俺のソーセージ一本やるよ、ヘル」
「わっ、本当ですか! じゃあおれのブロッコリーあげます!」
「それ食いたくねえだけだろ」
 ディヒヒと笑うヘルムートに「仕方ねえな」の笑みを返し、俺はもらったブロッコリーを一口で頬張った。

「故郷じゃ弁当なんか食ったことねえだろ。どんなモン食べてたんだ?」
「クーヘンはソーセージとても有名です。色々な種類があって、形も色々です。ハンバーグもありますよ!」
「食い物はあんまり地球と変わらないのか。まあお前が丸腰で地球にいられるってことは、空気とか気候とかも同じようなモンなんだろうし」
「へへ。おれ、ソーセージもハンバーグも大好きで、……」

 ヘルムートの言葉の途中で、玄関の呼び鈴が鳴った。一回、二回……続けて三回、四、五、六、七回。

「たくさんのピンポンです、誰か来ました!」
「一度鳴らせば分かるっつうの……」
 面倒臭く思いながらも立ち上がり、リビングを出てすぐの壁にあるモニターを確認する。
「げっ!」
「こんばんにゃー! 千代晴ちん、お部屋に入れてちょー!」

 モニターに映っていたのは、今朝ゴミ捨て場で会ったデンジャラス系ドM男子──ナハトだった。ツノが付いたヒョウ柄パーカのフードを被り、ぴょこぴょこと変な動きで飛び跳ねている。

「千代晴ちーん! 千代ちん、晴ちん!」
 ちなみに応対ボタンを押していないから、声はモニターから聞こえたものではない。ドアの向こうでナハトが叫んでいるのだ。

「何だよ! でけえ声出すんじゃねえ、何の用だっ」
「部屋の鍵、友達んちに忘れてきちゃったんだよ~。おしっこ漏れそう、漏れそう漏れそう!」
「ふ、ふざけんなよっ……!」
 慌ててドアを開けると、入ってきたナハトが「ハンバーグの匂いだぁ」と嬉しそうにニタニタと笑った。

「わ、……だ、誰ですか。すごい顔です……」
 リビングから顔だけ出して廊下を覗いていたヘルムートが、ビクビクしながらナハトを見上げている。
「ボクはナハトだよ。初めまして!」
「は、初めまして……ヘルムートです……」
「いいから早く小便しろよ! ここで漏らすんじゃねえぞ!」
 無理矢理ナハトをトイレに押し込み、ドアにもたれてフゥと息をつく。

「にゃー。我慢した分、気持ちいい~。イきそ~」
「………」

 ──変態め。